2014/8/1
リトル・トーキョーは全米で最も重要な日系アメリカ人のコミュニティです。そして、 時代の浮き沈みの中で世代を超えた強いコミュニティー意識の上に維持された町です。 第2次世界大戦の間の収容所生活を経て再興、衰退を繰り返し、日本からの企業投資、日本でのバブル崩壊による投資撤退等々に際しても、コミュニティーの団結力が衰えることはありませんでした。いまやダウンタウンで最も治安の良い地域として、深夜まで賑わいのある活性化した町の青写真が見えてきました。
しかし、この変化が文化的、経済的、そして環境的にコミュニティーとしてのアイデンティティの持続をもたらす事ができるものなのか? かつ、その変化をマネージメントすることが本当にできるのか?という大きな課題を抱えることにもなりました。
そこで、リトル・トーキョーコミュニティー評議会が中心になり、リトル・トーキョー・サービスセンターと協力し150以上の地元の組織を巻き込み「こどもの為に」「もったいない」を合言葉に、この文化的エコ・ディストリクトへの青図作成を行うことになりました。まさに、全米初の「文化的・エコ・ディストリクト」の誕生を目指すためです。
数年にわたる地下鉄リージョナル・コネクターの計画の当初の案がリトル・トーキョーを分断する形として公表され、コミュニティーが一丸となって反対運動を行ったのが昨日のようです。その結果、メトロ(地下鉄公団)もコミュニティの経済、文化、環境的な持続性の重要さを理解し、コミュニティーの要請を全面的に考慮した地下軌道、地下駅舎案に設計変更した形での実行が決まり、 そして新しいリトル・トーキョー/Arts District 駅はロサンゼルス郡で最も忙しい通過駅の1つになることが予想されています。
しかし、これらの多くの変化の最前線で、いかにコミュニティーとしてその変化のリスクを回避すべきか、という討論が始まりました。新しい駅周辺で予想される不動産投資に対して、地域に密着したビジョンを明確に作成する作業に着手しました。これが文化的エコ・ディストリクトのビジョン作成のきっかけとなりました。
コミュニティーメンバーが討議を重ねるなかで、日系人のおじいちゃん、おばあちゃんから聞かされていた言葉がそのヒントを与えてくれました。
「我々、そして一世、二世の人たちはこの町が『子供の為に』どうあるかを考えてきたんだ!」「子供たちに文化を大切にしてほしい」「やっとの思いで築いたこの町の繁栄を大切にしてほしい」「武道館の計画も実現できそうなので、週末に子供たち、孫たちが、この町に来るのを楽しみにしてくれるような環境を維持したい」・・・といった声が聞かれました。
また、「我々は昔から、物を大切にするように教わってきた、まだ使えるものを捨てるな、友人、家族と共有できれば物を増やさないですむ・・・といった『もったいない!』という言葉で良く怒られたっけ!」といった思い出を語る方もいらっしゃいました。
収容所生活も含め、移民として頑張ってきた日系人の誇りなのでしょう。昨今の地球環境問題も、「お互いに共有できる資源を大切に使う」「再利用に知恵をしぼる」「これがおじいちゃん、おばあちゃんが言っていた『もったいない』ということなんだ」・・・と。
こうして、週末を返上して話合いの場を重ねて完成したのが、今後30年のマスタープランです。ついにはこの話を聞きつけた米国エコ・ディストリクト指定機関から、「環境保全と文化保存」を結びつけたリトル東京コミュニティーのアプローチは大変ユニークであるとして、「文化的エコ・ディストリクト」の称号をいただき、いよいよその実現に踏み出すところです。
最近のリトル東京への非日系人増加に関してどう思いますか?という質問を受けた日系四世の若者は、「我々は両手を広げて歓迎したい、文化は人種を超えられるからネ。皆、この町にある文化、ビジネス、アクティビティが好きだからきてくれるんだ!」と言った後、「でも、靴はちゃんと脱いで入ってきてネ!」と、続けます。 町を愛する人たちが世代を超えて街づくりをしている、という事実をとても強く感じる町です。