2024年 4月号  Issue No.426

 

商工部会

「The JBA 63rd Annual Reception(Sustainable Future with Hydrogen Technology)」を開催

去る2/9(金)、在ロサンゼルス日本国総領事公邸にて「The JBA 63rd Annual Reception」を開催した。カリフォルニア州の公選議員および政府機関、政治経済団体の関係者に多数参列いただいた今回は、ネットワーキングに加えて、「Sustainable Future with Hydrogen Technology(水素技術による持続可能な未来)」と題し、水素エネルギー関連の日系企業7社がプレゼンテーションを行うという、官民一体の取り組みとなった。

庭園にて撮影した集合写真。

庭園にて撮影した集合写真。

レセプションでは今話題の焼酎をPRするブースも

毎年この時期、JBAの設立を祝う意味で「Anniversary Reception」と称して開催されてきた当イベントだが、今回より「Annual Reception」と名称を変えての開催となった「The JBA 63rd Annual Reception」。気持ちのいい晴天となった当日、開場の15時半を過ぎると参加者が続々と来場し、レセプション会場である公邸内の庭園のあちこちで談話の輪が広がり始めた。

庭園にて撮影した集合写真。庭園で行われたレセプションでは、参加者同士が思い思いに交流を楽しんだ。

庭園で行われたレセプションでは、参加者同士が思い思いに交流を楽しんだ。

会場では軽食や飲み物が振る舞われたほか、このほど、アルコール飲料規制に関する法律改正案「AB416: Sale of Shochu」によってカリフォルニア州が日本の焼酎を正式に認め、これまではワイン販売免許を持つ州内のレストランが日本の焼酎を売る際、「Soju(ソジュ)」と表示されていないと販売できなかったのが、「Shochu」という表示で販売できるようになったことを祝して、Mutual Trading(共同貿易)とiichikoによる焼酎ブースも設けられた。当日は「AB416: Sale of Shochu」の筆頭提出者であるAl Muratsuchi下院議員が参列されていたこともあり、同氏に対する敬意の意味も込められた。

焼酎のブースに立ち寄り、説明を熱心に聞くMuratsuchi下院議員。

焼酎のブースに立ち寄り、説明を熱心に聞くMuratsuchi下院議員。

総領事、JBA代表、来賓による挨拶

4時半になると、ジャパン・ハウス ロサンゼルス館長であり、商工部会のメンバーでもある海部優子さんの司会により、会全体の流れに関する説明が行われた。それから参加者全員の集合写真を撮影すると、レセプションは終了。その後、公邸内の大サロンに会場を移し、関係者、来賓からの挨拶を行った。最初に登壇したのは、曽根健孝総領事。来賓、関係者へのイベント参加への謝辞を述べた後、「まず、JBAの日本企業のハブとしての持続的で献身的なサービス、日本と南カリフォルニアの橋渡しとしての役割に感謝したいと思います。日本企業の南カリフォルニアへの投資は継続的に最大規模であり、地元経済を力強く支えています。また、カリフォルニアの水素インフラへの日本企業の貢献と潜在的な貢献は計り知れません。今日は、皆さんが日本の水素技術革新についてもっと学ぶ、素晴らしい機会となることを願っています」と話したほか、「AB416: Sale of Shochu」を可決したカリフォルニア州、そしてそれに尽力したAl Muratsuchi下院議員に感謝の意も表した。

司会を務めた海部ジャパン・ハウス ロサンゼルス館長。曽根総領事に対し、「今回のレセプション、そして『水素技術による持続可能な未来』の共同ホストになってくださり、本当にありがとうございます」と感謝の言葉を投げかけた。

司会を務めた海部ジャパン・ハウス ロサンゼルス館長。

曽根総領事に対し、「今回のレセプション、そして『水素技術による持続可能な未来』の共同ホストになってくださり、本当にありがとうございます」と感謝の言葉を投げかけた。

「カリフォルニアにおける水素インフラの普及を、JBAや日系アメリカ人関連団体、在サンフランシスコ日本総領事館などと協力しながら推進していきたい」と力強く語った、曽根総領事。

「カリフォルニアにおける水素インフラの普及を、JBAや日系アメリカ人関連団体、在サンフランシスコ日本総領事館などと協力しながら推進していきたい」と力強く語った、曽根総領事。

続いてJBAの代表として、当日は参加できなかった山本JBA会長に代わり、林隆人JBAセクレタリーが登壇。「ご存知のようにJBAは非営利団体で、その使命は南カリフォルニアのビジネス環境を改善し、発展させることです。私たちにとって、米国と日本の関係、特にカリフォルニアと日本の関係強化は、活動の根幹です。長年にわたるご支援に感謝します。今日達成したい目的は、第一にカリフォルニア州の政府、ビジネスコミュニティーとのより強い関係を築くこと、第二に、それらコミュニティーと日本企業間における意義ある関係の構築をお手伝いをすることです。今日のテーマは水素エネルギーであり、この分野に力を入れている企業を招待しています。ぜひ、水素エネルギーが有意義なものであることを皆さんに感じていただければ幸いです」と話した。

「水素エネルギーの技術によって何が達成できるのか。本日のイベントをきっかけに、皆さんが学び、議論いただくことを願っています」と話した、林JBAセクレタリー。

「水素エネルギーの技術によって何が達成できるのか。本日のイベントをきっかけに、皆さんが学び、議論いただくことを願っています」と話した、林JBAセクレタリー。

その後、海部さんが来賓を紹介。Steven Bradfordカリフォルニア州上院議員、Al Muratsuchiカリフォルニア州下院議員、オレンジ郡監督委員会議長のDonald P. Wagnerさん、ロサンゼルス市議会議長のPaul Krekorianさん、アルハンブラ市議会議員のJeffrey Maloneyさん、Robert Hertzberg元カリフォルニア州上院議員、ロサンゼルス商工会議所CEOのMaria Salinasさん、LAEDC / WTCLAのCEO/プレジデントStephen Cheungさん、オレンジ・カウンティー・ビジネス・カウンシルのCEO/プレジデントJeffrey Ballさんらの名前を挙げ、参加への感謝の言葉を述べた。

続いて、Al Muratsuchiカリフォルニア州下院議員が登壇。「昨春、カリフォルニア州から約100人の貿易代表団が日本を訪れ、幸運なことに私も参加しました。日本がアメリカの最大の同盟国の一つであること、そして特にカリフォルニア州では長年、日本が州内で最大の海外直接投資国であることを再認識することができました。カリフォルニアと日本の間には、気候変動と戦うという共通認識があります。私はちょうど今日、カリフォルニア州環境経済財団の会議に出席してきたのですが、カリフォルニアが2045年までにカーボンニュートラルの目標をどうしたら達成できるかに焦点を当てていました。水素はこの道のりにおいて重要な役割を果たすでしょう」と、水素エネルギーの重要性を強調した。

「AB416: Sales of Shochu」についても触れ、「焼酎をSojuとして売らなければいけないというのは、テキーラをウイスキーとして売らなければいけないのと一緒だ、と説明した時に、同僚議員たちも理解してくれました。今回の法改正は、私がしてきた仕事の中でも最も大きなことの一つかもしれません」と話したMuratsuchi下院議員。

「AB416: Sale of Shochu」についても触れ、「焼酎をSojuとして売らなければいけないというのは、テキーラをウイスキーとして売らなければいけないのと一緒だ、と説明した時に、同僚議員たちも理解してくれました。今回の法改正は、私がしてきた仕事の中でも最も大きなことの一つかもしれません」と話したMuratsuchi下院議員。

次にマイクを持ったのは、オレンジ郡監督委員会議長のDonald P. Wagnerさん。「オレンジ・カウンティーにはビジネスにおいて提供できるものが数多くあります。UC Irvineは水素技術を含む多くの分野で最先端の研究を行っていますし、Irvine Spectrum には多くのハイテク企業が集まっており、日本企業のオフィスもここに集中しています。私たちは南カリフォルニアにおける日本のビジネスやビジネスコミュニティーを強く支持します」と、オレンジ・カウンティーがいかに日本企業に対してオープンかを熱弁した。

大谷翔平選手がオレンジ・カウンティーのエンジェルスからドジャースに移籍したことを残念がりながら、「僕はLAに長く暮らしていたから、実はドジャースファンなんだ。だからシーズンの開始が楽しみだよ!」とジョークを飛ばして会場を沸かせたWagnerさん。

大谷翔平選手がオレンジ・カウンティーのエンジェルスからドジャースに移籍したことを残念がりながら、「僕はLAに長く暮らしていたから、実はドジャースファンなんだ。だからシーズンの開始が楽しみだよ!」とジョークを飛ばして会場を沸かせたWagnerさん。

最後に、米日カウンシル役員Tom Iinoさんが登壇し、「日本はアメリカにとって最も信頼できるアジアの同盟国であり、日米関係は今も昔も非常に重要です。かつて勢いのあった日本経済は一度バブルで崩壊しましたが、昨今、日本は国際的なリーダーとして、先進国として、復活してきています。今宵は皆でその復活を祝いましょう!乾杯!」と乾杯の音頭を取り、会はディナーおよび歓談の時間へと移った。

「日本とアメリカは経済的にも安全保障的にも互いを必要とする、家族のような関係」と話したIinoさん。

「日本とアメリカは経済的にも安全保障的にも互いを必要とする、家族のような関係」と話したIinoさん。

「日本水素フォーラム(JH2F)」参加企業の7社が、プレゼンテーションを敢行

ディナーが一段落すると、水素技術に関するプレゼンテーションの時間となり、モデレーターを務めた「日本水素フォーラム(JH2F)」の議長、横尾将士さんが登壇。日本もカリフォルニアも2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目標としている旨、またその共通の目標の下、ここ数年、名古屋港や神戸港、横浜港などが立て続けにロサンゼルス港と覚書を締結し、港湾における持続可能性と環境問題への協力を正式に決定した旨、さらに日本政府とカリフォルニア州が2022年3月に気候変動対策の強化に関する協定を締結した旨などについて話した。

「我々日本企業が持つ水素技術で、カリフォルニアのゼロエミッションを後押ししたい」と熱く語った横尾さん。

「我々日本企業が持つ水素技術で、カリフォルニアのゼロエミッションを後押ししたい」と熱く語った横尾さん。

プレゼンテーションに聞き入る会場の参加者の皆さん。

プレゼンテーションに聞き入る会場の参加者の皆さん。

さらに横尾さんは、「私の任務は、皆さんに水素エネルギーについて印象付けることです。我々(JH2F)は水素ビジネスの経験が豊富で、アメリカにおける水素社会の発展の促進に意欲的な日本および日本関連の地元企業30社以上が参加しています。そしてその数は増え続けています。私たちは水素の生産から輸送、貯蔵、分配、電力の生成などに至るまで、全ての水素ビジネスの領域をカバーできるチームです。さまざまな市場の顧客のニーズに対して、適切な水素ソリューションを提供できます。今日は私たちのチームから、7つの企業を紹介したいと思います。どうぞ彼らを歓迎してください」と述べ、企業にバトンを渡した。以下は、プレゼンテーションを行った7企業およびその担当者、プレゼン内容の抜粋だ。

Toyota Tsusho America, Inc.(Senior Manager, Corporate Strategy and Sustainable Business Development/Toru Sugiuraさん)

Toyota Tsusho America, Inc.

Senior Manager, Corporate Strategy and Sustainable Business DevelopmentToru Sugiuraさん)

水素技術に関して積極的な研究・開発および投資を行っている総合商社、Toyota Tsusho America, Inc.。プレゼンテーションでは、2030年までに全てのコンテナ取り扱い機器をゼロエミッションに、2035年までに港湾内の短距離輸送トラックをゼロエミッションにするという積極的な環境目標を掲げるロサンゼルス港、ロングビーチ港に対し、多岐にわたる水素ソリューションを提供していく旨が話された。

PACECO CORP.(Director/Troy Collardさん)

PACECO CORP.

DirectorTroy Collardさん)

港湾用クレーンや物流システムの設計、製造、販売などを行うPACECO CORP.からは、同社が開発する世界初の水素RTG(港湾やコンテナターミナルで使用される移動式のクレーン)について紹介された。2024年2月に日本からロサンゼルス港の主要なコンテナターミナルの一つ、Yusen Terminals Inc.に届けられてからテストを行っており、近いうちに実際の現場での運用に移る見込みだとか。

Mitsui O.S.K Lines, Ltd.(Senior Manager/Yuki Ebinaさん)

Mitsui O.S.K Lines, Ltd.

Senior ManagerYuki Ebinaさん)

大手海運会社のMitsui O.S.K Lines, Ltd.は、同社の脱炭素化に向けた取り組みである「Wind Hunter」プロジェクトを紹介した。これは燃料を補給せずに航海できる船の開発プロジェクトで、強風時には帆が風を受けて船を推進、その間に水中のタービンが回って発電し、水素を生産。水素はMCHと呼ばれる物質の形でタンクに貯蔵される。そして、風が弱い時にはその水素を使った燃料電池で発電、電動プロペラを回して船を推進させるというものだ。

Sumitomo Corporation Of Americas(Manager, Energy Seeding Department, Energy Group /Elizabeth Batista Moodyさん)

Sumitomo Corporation Of Americas

Manager, Energy Seeding Department, Energy Group Elizabeth Batista Moodyさん)

船舶燃料としてアンモニアを供給する事業「アンモニアバンカリング」についてアピールしたSumitomo Corporation Of Americas。国際海事機関(IMO)が、2030年までに温室効果ガス排出量を30%に、2050年までにゼロにするという積極的な脱炭素化目標を設定しており、それに対してアンモニアがスケーラブルかつ、燃焼時に二酸化炭素を一切排出しない燃料で、しかもエネルギー密度が高く長い船旅を十分サポートできる、とした。

Toyota Motor North America(General Manager, Fuel Cell Department/Justin Wardさん)

Toyota Motor North America

General Manager, Fuel Cell DepartmentJustin Wardさん)

Toyota Motor North AmericaのWardさんは、水素燃料電池車(FCV)「Mirai」の普及について、いかに高収入のアーリーアダプターだけでなく一般層に浸透させることが重要かに触れ、試験的に55台の「Mirai」および3年分の水素をLA近郊の低所得者に寄付し、その実現可能性をテストした旨を話した。また、水素燃料電池車をさらに大きな貨物トラックや港湾内のヤードトラクターなどにスケールアップしてきた事例にも触れた。

Mitsui & Co. (U.S.A.), Inc.(LA General Manager, Regional Manager/Ryan Batesさん、Senior Analyst/Kosuke Makinoさん)

Choshu Industry Corporation of America, Inc.

Director of Program ManagementPingchia Changさん)

先進のエネルギー機器や有機ELデバイス製造装置などのメーカーで、水素エネルギー技術にも積極的に取り込む同社は、高圧水素を運搬、補填せずとも一つのパッケージで水素を生成し、燃料電池車に給油できる水素ステーション「SHiPS」を紹介した。また、省スペースで強いパワーを発揮する水素燃料電池発電機「MizTomo」のほか、水素ディスペンサー、高圧水素タンク、太陽光パネルなどについても触れた。

Mitsui & Co. (U.S.A.), Inc.

LA General Manager, Regional ManagerRyan Batesさん、Senior AnalystKosuke Makinoさん)

先に登場した他の大手総合商社と同様、クリーンエネルギー分野には非常に力を入れているMitsui & Co. (U.S.A.), Inc.。水素エネルギーに関しては、水素の生産から保管、輸送、販売、利用までを包括したサプライチェーンを作り出そうとしていると話し、その一例として、カリフォルニア州を中心に水素燃料供給インフラを展開するFirstElement Fuelに出資し、40の水素ステーションを運用しているケースなどを挙げた。

以上の内容で、水素技術に関するプレゼンテーションは終了。最後に海部さんが「今夜は水素についてたくさんのことを学べました。今後の当地における水素技術の普及には、日米の政府間、ビジネスにおけるコラボレーションが非常に重要だと感じました。今日の素晴らしいイベントを企画・運営したJBAの商工部会メンバーの皆さん、本当にありがとうございました」と話し、会を締めくくった。

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教育文化部会

教育ウェビナー「デジタル時代の漢字力と漢字教育を考える」報告

去る2月25日(日)、毎年恒例の教育文化部会主催の教育セミナーがオンラインで開催された。今年もカリフォルニア州立大学ロングビーチ校のダグラス名誉教授を講師に迎えながら、テーマを例年の「バイリンガル教育」から「漢字教育」へと変えて行われた。

【講師】ダグラス昌子さん

【講師】ダグラス昌子さん

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校アジア・アジアンアメリカン研究学部日本語科名誉教授。専門分野は継承日本語の発達、カリキュラムデザイン、リテラシーの発達など。南カリフォルニア大学卒。教育学博士。

手書きよりパソコン
多様化するデジタル時代の漢字力

ウェビナーの冒頭、日下部教育文化部会長が登場し、「毎年恒例になっている教育セミナーですが、今年は漢字を取り上げた奥深いテーマです。日本生まれ、アメリカ育ちの私にとりまして、漢字は読めるけれど書くことに自信がないという点で今回のテーマは非常に興味深いものです。そして、私の子どもは現在、あさひ学園で漢字を一生懸命学んでいます。今回のセミナーが、今後の皆さんのお子さま方の漢字学習の参考になればと思っております」と挨拶した。

続いて登場した講師のダグラス教授は「一方通行のセミナーではなくできるだけインタラクトしながら進めていきたいと思います」と語り、早速、参加者にアンケートという形で交流を図った。「漢字の勉強というと何を学ぶことだと思いますか」との問いに対して「読み方」「書き方」「意味」「筆順」「画数」「はね、とめなど」「字形」といった選択肢の中から多くの人が「読み方(100%)」「書き方(85%)」「意味(95%)」を選んで回答した。

その結果を受けて、ダグラス教授は、今回のセミナーの目的を次のように説明した。「日常生活でテクノロジーを使うことが普通になり、携帯でテキストメッセージを送ったり、文書をコンピューターで作成したりする昨今、手書きでものを書くということも激減しています。キーボードにひらがなでタイプすると漢字の言葉がいくつか表示され、その中から正しい漢字を選ぶという活動が日常化しています。このような変化にともない、日本人の漢字力も変化しているという報告があります。一方、学校の国語教育では、漢字をドリルなどで何度も書かせて覚える教育が変わることなく行われています。日本人の漢字力の変化と、変わることのない学校での漢字教育には大きなギャップが生まれているのです。テクノロジー時代に必要な漢字力とはどのようなものか。また、その必要とされる漢字力を発達させるためにどのような漢字教育が必要かということを、今回のセミナーで考えてみたいと思います」。

「手書きの頻度の変化」を説明するスライド(提供:ダグラス昌子さん)。

「手書きの頻度の変化」を説明するスライド(提供:ダグラス昌子さん)。

そして、日本の文化庁文化部国語科が行った「国語に関する世論調査」に触れた。「同調査によると、日本では手書きする人の数は年々減っています。その結果、漢字を正確に書く力が衰えていると感じる人が増えています。逆に(選択肢が出てくることで)手書きの時には書けなかった難しい漢字を使うようになっています。「挨拶(あいさつ)」や「齟齬(そご)」「顰蹙(ひんしゅく)」など手書きの時は漢字で書かなかったのに、パソコンを使うことでそれらを漢字で書く人が増えています。これは非常に興味深いことです」。

ダグラス教授は、「デジタル時代の漢字力とは、漢字の語彙の意味を知っている、漢字の部分を成す基礎漢字の意味や音を知っている、文中でその語とほかの語を適切に組み合わせられる(コロケーション)ということです」と述べた上で、「2020年に開催された全米日本語教師連盟主催のウェビナーでも、ニューヨークの日系企業の役員の方が、『職場では漢字を書けなくてもいいが読めることが必要だ』 とおっしゃっていました。職場や日常生活で求められる漢字力も今や多様化していて、昔のようにこうでなくてはいけないということではないのです」と語った。

デジタル時代の漢字教育とは
どうあるべきか?

次に話題は「デジタル時代の漢字教育」へと移った。そこでダグラス教授は、「日本の学校の国語教育の現状」をいくつか論文を引用しながら紹介した。「日本では書いて覚えるという教育が依然として行われています。ひたすら書かせる教育以外の漢字教育の方法があることを、指導者自身が考えることが難しいと指摘する研究者がいます。一方、私のカリフォルニアの継承日本語学校で日本語を学ぶ児童を対象にした研究によると、教えられる立場の子どもたちはどうやって漢字を覚えようとしているかというと、字形と絵や物を連結させたり、対語や仲間の漢字と連結させたりすることで覚えていました。教わらなくても工夫して覚えています。丸暗記しているという学び方はごく少数でした。認知心理学の研究から見ても、丸暗記は記憶に留まりません。他方、学校では 漢字の知識を付ける教育に加えて、漢字を学習する力を身に付けるように指導すべきだと主張する研究者もいます」。

ここで、ダグラス教授は、日本に住む外国にルーツを持つ12歳のレオンくんが、自ら開発した「漢字ミッション」という漢字学習法を紹介したビデオを流した。彼は、「ドリルで漢字を覚えることは今の時代に合っていない。パズル形式の漢字ミッションに挑戦することで人は楽しく漢字を学べる。これこそアクティブラーニング」と、短い動画の中で「漢字ドリル」から「漢字ミッション」に移行すべきだと語っている。

この動画を紹介した後、ダグラス教授は「彼のように漢字学習を自由な発想で行うことに大変感銘を受けました。自分なりに学習を工夫することの良い例だと思います」と、漢字学習法を学ぶ側が工夫することは素晴らしいことだとコメントした。

続いて、長野県の高校生が作成した「漢字テストの不思議」という動画で、漢字テストの採点方法において、なぜ教師間でばらつきがあるのかについての動画の一部も紹介された。この動画によると、実は採点の基準は本来、常用漢字表を基にすべきだが、実態としては採点する教師自身が習った知識に頼っている場合が多いために、漢字テストで生徒が書いた漢字を正解とするか間違いとするかに教師間で違いが出てしまうということが分かった。

ダグラス教授は「この動画を作成した高校生たちもあっぱれです。教師や保護者は自分が習った方法しかない、それが一番だという信念に従って教えようとしますが、そこからくる矛盾を見事言い当てています 」と、教える側の個人的な信念は、入学試験での成績にも影響を及ぼす可能性があるので、注意すべきだと警告した。

最後にまとめとして、「漢字は字ではなく語彙として学ぶ必要があります。漢字教育は何度も書いて覚えることに重点を置くより、漢字の覚え方を子どもが工夫していることに注目して、漢字学習力を高めていくことが重要です」と語り、さらに「物事が時代に応じて進化していく時には昔から行ってきた方法を『これでいいのか』と検討し、新しい方法にパラダイムシフトしていくことが必要になります。漢字教育にも、そのパラダイムシフトが今こそ必要なのではないかと考えます」と締めくくった。

「子どもたちは、漢字をどのように覚えているか」を説明するスライド(提供:ダグラス昌子さん)。

「子どもたちは、漢字をどのように覚えているか」を説明するスライド(提供:ダグラス昌子さん)。

 

各部会からのお知らせ

 

ダウンタウン地域部会

「Genesis Invitationalゴルフ観戦ツアー」に参加しての感想文

文:Ushio America, Inc. ・亀田真二さん

雨が少ないことで知られるサザンカリフォルニアですが、昨年末から今年2月にかけての降雨量は歴史的にも多く、憂鬱な週末を過ごすことが多くなりました。「どうかGenesis Invitational だけは降らないでくれ」と願いながら迎えた2月18日(日)の朝、松山選手が6打差7位で最終ラウンドに残ったことを知り、足取りも軽くRiviera Country Clubに向かいました。

 

世界中のゴルフ場の写真を撮られている宮本卓さんからは、タイガー・ウッズが16歳で初めてRiviera Country Clubでプレーをした時から現在まで、30年以上撮り続けてこられた世界で唯一の写真家であるというお話を伺いました。また、当日Riviera Country ClubのCFO、寺嶋さんから出題されたトリビアクイズでは、私が最後まで残ることができました。そして、景品として松山選手サイン入りのキャップを頂くという超ラッキーな展開は全く想定していませんでした。

 

松山選手は順調にロングパットを決めるなど、最終的にはボギーなし9バーディーという猛チャージ、この日最小の62というスコアでの大逆転優勝劇をライブで目撃したことで、興奮は頂点に。その頃には曇り空の隙間から太陽が顔を出し、いつものサザンカリフォルニアに戻っていました。1927年のオープン以来、アメリカゴルフのアイコンとなるRiviera Country Clubのオーナーが日本人であること、そのRiviera Country Clubで松山選手がアジア人初、PGAツアー9勝目となる優勝の座を得たことは、当地アメリカで仕事をしている日本人の一人としてうれしく、かつエネルギーを頂いたように感じています。この機会を作っていただいたJBAの皆さまに深く感謝いたします。

曇天の朝、「Genesis Invitationalゴルフ観戦ツアー」参加のために集まった皆さん。

曇天の朝、「Genesis Invitationalゴルフ観戦ツアー」参加のために集まった皆さん。

松山選手サイン入りのキャップを手にした筆者の亀田さん(右)。左はRiviera Country Clubの寺嶋さん。

松山選手サイン入りのキャップを手にした筆者の亀田さん(右)。左はRiviera Country Clubの寺嶋さん。

あさひ学園だより

文:あさひ学園事務局

サンタモニカ校高等部グローバルコースで、上映会を実施

今年度のサンタモニカ校高等部グローバルコースの上映会は、グローバルデーとして実施されました。上映会は、同コースで学習する「比較表現」という本校独自科目の発表会です。上映するのは、生徒が字幕翻訳をつけた動画ですが、1年生は英語動画に日本語字幕を、2年生は日本語動画に英語字幕を挿入した作品です。今年度の1年生の動画はフランスの公共放送局(France 24 English)の「フランス国際テレビ局から見た日本の引きこもり」、また、2年生の動画は「和太鼓と百人一首」という自主制作作品でした。

 

今回のグローバルデーのハイライトは、アメリカ連邦政府評価評議会事務局長であり、予算管理局シニアアドバイザーの原田クリスティン様をお迎えし、「世界市民をめざして」をテーマに講演をしていただきました。その基礎となるのは、やはり日米両文化と言語を併せ持つことなど、サンタモニカ校卒業生でもある同氏からの話は実りあるものでした。また、在ロサンゼルス日本国総領事館から青島尚重首席領事が来賓としてご臨席いただいたことを機会に、急きょ、原田様と青島首席領事によるパネルディスカッション「キミたちは未来をどう生きるか」をしていただきました。

 

日本からは、字幕翻訳指導のための研修をしていただいている日本映像翻訳アカデミー社から、取締役の新楽様と教育担当の桜井先生がオンラインにてご臨席くださったことも、グローバルデーとしてふさわしいものとなり、高校生たちは自分の能力をさらに磨いて、世界市民としてグローバルな活躍する未来を感じたようでした。なお、グローバルデーの様子は、フジサンケイTV局にてロサンゼルスのローカルニュースとして放映されました(あさひ学園グローバルデー)。

原田様の講演の様子。

原田様の講演の様子。

左から原田様、青島首席領事、黒木副領事。

左から原田様、青島首席領事、黒木副領事。

黒木副領事とサンタモニカ校高等部の生徒たち。

黒木副領事とサンタモニカ校高等部の生徒たち。

トーランス校で、外部講師による高等部特別授業を実施

一方、トーランス校高等部では、米国書道研究会理事長の山本宗治先生をお招きして、書道について歴史などの講話と大書する実演をご披露いただきました。米国書道研究会は、1965年に西海岸の7都市で書道教室を開くことから始まったそうです。ロサンゼルスでは書道普及のための第一人者として牽引されています。

 

生徒たちは、日常的にはパソコンで文字を打つことが多く、手書きをすること自体少ない中で、本格的な書に触れる機会はほとんどありません。ですが、この日は、生徒たちは実際に筆を使っていろいろな書体の文字を書き、直々に山本先生や研究会からご参加いただきました他4名の先生方からもご指導をいただきました。筆による書をしたためるために、墨をすり、背筋を伸ばして、精神を研ぎすまして机に向かうという普段の生活にはない書道の素晴らしさを体験しました。

 

生徒の感想は「書道では、自信を持って力強く書く必要があることを学んだ」や、「初めての経験でとても楽しかった」などで、文字を通して日本文化を知り、体感し、多くを学ぶことができました。

山本先生による大書の実演 今年の干支“龍”。

山本先生による大書の実演 今年の干支“龍”。

山本先生の指導を受けるトーランス校高等部の生徒たち。

山本先生の指導を受けるトーランス校高等部の生徒たち。

書道に挑戦するトーランス校高等部の生徒たち。

書道に挑戦するトーランス校高等部の生徒たち。

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新入会企業紹介

Steve Sakanashi さん

日系企業の米国現地でのニーズを理解するとともに、関係各位とのネットワークを構築し、さまざまな知識と資源を共有するために入会しました。

 

Steve Sakanashi さん

ABeam Consulting (USA) Ltd.

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住所:222 W. Las Colinas Blvd., Suite 2150 N, Irving, TX 75039 

TEL:972-929-3130 

Web:https://www.abeam.com

責任者:Steve Sakanashi (Director of Strategic Partnerships)

従業員数:150名

他の営業拠点:ダラス、シカゴ、ニューヨーク

– – – – –

ABeam Consulting (USA) Ltd.は、創立以来40年以上、日本発、アジア発のグローバルコンサルティング会社として、顧客の変革実現への挑戦を支援してきた。多様な専門性を持つプロフェッショナルたちが、経営戦略立案から戦略実現のためのビジネスコンサルティング、業務コンサルティング、デジタルテクノロジーの導入・運用まで一気通貫のサービスを提供している。

Sean Chigusaさん

アメリカで活躍されている日本の政府機関ならびに日本企業の方々との交流を深め、情報交換ができればと思い入会させていただきました。これからどうぞよろしくお願いいたします。

 

Sean Chigusaさん

Choshu Industry Corporation of America, Inc.

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住所:3625 Del Amo Blvd., Suite 230, Torrance, CA 90503

TEL:310-370-2280

Web:https://choshu-america.com

責任者: Sean Chigusa(Chief Executive Officer)

従業員数:5名

他の営業拠点:海外拠点は北米トーランスオフィスのみ

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Choshu Industry Corporation of America Inc.は、2019年12月に北米の水素市場への参入活動、事業拡大に向けた準備を進めるために長州産業株式会社の北米支店としてカリフォルニアのトーランスにオフィスを設立した。世界ではカーボンニュートラルへの移行が進み、さまざまな対策が講じられており、このような技術は日々進歩している。 同社は目標を達成するために常に前進している。長州産業株式会社は、世の中をより良くしたいという願いを持っており、 北米支店も同じ思いを引き継ぎ、バイオマス処理や水素関連機器を通じてサステイナブルなエネルギーシステムのさらなる拡大に向けて会社を発展させていく意向だ。

北田将充さん

本年より南カリフォルニアに拠点を移し、「Tejava」や「ポカリスエット」を中心とした飲料事業を行っています。JBAにご参加されている企業の皆さまとコミュニケーションを取らせていただきながら、地域に根差した活動をしていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

北田将充さん

Crystal Geyser Water Company

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住所:501 Washington Street, Calistoga, CA 94515

TEL:888-424-1977

Web:https://crystalgeyserwatercompany.com

責任者: 北田将充(President & CEO)

従業員数:約60名(2024年2月時点)

他の営業拠点:1

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Crystal Geyser Water Companyは、1977年にカリフォルニア州カリストガで創業。自然で健康的な飲料の開発に取り組み、フレーバー付きのスパークリングウォーターや、保存料を使用しない無糖紅茶など、新たな価値を持つ製品を市場に届けてきた。現在は、無糖紅茶「Tejava」とイオン(電解質)飲料「Pocari Sweat」の販売を通じて、健康的なライフスタイルを支えることを目指しながら、地域社会と共に歩み、品質と健康へのこだわりを持ち続け、革新的な製品や価値の創造に挑戦し続ける企業でありたいと考えている。

 

4月、5月のJBAイベントカレンダー

4/7(日)

植物園ボランティア

サウスベイ地域部会

4/27(土)

マンザナー巡礼バスツアー

ダウンタウン地域部会

5/19(日)

大リーグ野球観戦 Cincinnati Reds at Los Angeles Dodgers

※募集要項は4月22日(月)に告知予定。

ダウンタウン地域部会

Save the Date!

6/9(日)

第34回OC大運動会

オレンジカウンティ地域部会

Save the Date!

7/27(土)

第30回JBA Foundation

チャリティーゴルフトーナメント

教育文化部会

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