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8/14(Fri) | 第118 回ビジネスセミナー

「作って終わらせない、結果を出すためのオンライン
マーケティングの考え方」開催

去る5月16日、ホリデーイン・トーランスで第118回ビジネスセミナーを開催した。ここ10年でインターネット人口は爆発的に増え、2005年には10億人突破。各企業ともウェブサイトを充実させ、少しでも多くの顧客を取り込もうと必死だ。そこで今回は、Logial eXtensionS, Inc.のPresident & CEOである木村拓也さんが、「結果を出すためのオンラインマーケティング」を伝授してくれた。

営業プロセスの一環としてのウェブ
「結果が見えないからと言って、すぐに止めてしまうのは良くありません」と語る木村さん
「結果が見えないからと言って、すぐに止めてしまうのは良くありません」と語る木村さん

インターネットが爆発的に広がって10 年以上が経ちますが、産業史から見れば、またまだ若いビジネスです。そもそも昔はウェブサイトの数が少なかったため、ちょっと珍しいことをすれば目立つことができました。しかし、今では世界中に80 億のウェブサイトが存在し、その中で注目を得るということは至難の業。情報として価値のあるウェブサイトだけが生き残れるというわけです。

また、グーグルの検索エンジンのロジックが主流になるまでは、「META タグ」という技術を使って検索エンジンの上位に表示させ、簡単にウェブサイトへのアクセス数を稼ぐことができましたが、今ではそのような簡単な方法はありません。他社を出し抜く特効薬がないというわけです。ですから、今後のオンラインマーケティングに関しては、きちんとした施策の基に対策を練る必要があります。

ネットのユーザー数やインターネットの普及率などを見ますと、ネットユーザーと現実に生きる人の数は、どんどん近付いています。初期のインターネットユーザーは、どちらかと言うとオタク的な人間が多かったのですが、今では現実の人々の数に均衡しています。ですからウェブは、マーケティングの観点からも確実に成熟しつつあるメディアなのです。

しかし、現実は集客数や売り上げが伸びないといったことをよく耳にします。私の経験からですが、企業には「ウェブ」という特別な響きだけで、「若い人間に任せておけば良い」という発想があり、会社全体のマーケティングから切り離して考える傾向があるようです。これが原因で、ネット上での営業に結果が見えてこないのではないかと思います。

集客と受注のバランスが重要

営業プロセスには、以下の4つのステップがあります。まず初めに、自社の商品やサービスに興味を示す人を集める「集客」。2番目に、それらの人たちの中から具体的に話ができる対象を絞り込む「見込み客の確保」。3番目は実際の受注活動である「クロージング」で、最後に「アフターフォロー」となります。一般的な営業プロセスでは、この4つのファクターを分離し、運営することが最も効率的なのですが、現実はこれらのプロセスのいくつか、あるいは全部を1人でしてしまう会社が多いのも事
実です。

さて、このプロセスをウェブでのマーケティングに応用してみますと、最初の「集客」部分が「インターネットでの露出」になります。次にネットユーザーに入力フォームを記入させたりすることで、見込み客の情報を得ることが「見込み客の確保」にあたり、「クロージング」は最終的な購買、その後の新製品情報やメールマガジンの配布およびトラブル対応などが「アフターフォロー」にあたります。これらのうち最初の2ステップを「集客レイヤー」、後半の2ステップを「受注レイヤー」と呼びます。ウェブサイトの効果が上がらないのは、サイトの存在がターゲットに認知されていないという「集客レイヤー」の問題と、「サイトへの訪問価値がない」「完成度が低い」など、サイト自体の価値が低いという「受注レイヤー」での問題が原因となります。

サイトの告知は多発的かつ長期的に

サイトの告知活動を見てみましょう。現実の書店を例に挙げると、本を売る側(販売側)は、新刊の宣伝をしたり、店頭にポスターを貼るなどして情報を「Push」する存在となります。しかし、インターネット上では、本を求めるユーザーが情報を「Pull」する存在となります。ここで目的意識を持って商品を探す(情報をPull する)ユーザーに対し、企業がどうアピールするかが問われるのです。そのため、他サイトにリンクを張ったり、SEO 対策を行うことで競合他社製品よりも上位に表示されるようにするなどの対策が必要です。

さて、告知活動を拡大するには、ユーザーがサイトを見つけてくれるのを待っていてはいけません。ターゲットユーザーが多く集まる場所に積極的に導線を仕掛け、中長期的なプロモーションを展開することで、品質とサービスに対する大衆の安心感を高め、潜在的ユーザーの購買意欲を高めることが必要です。具体的には、自社サイトや関連企業からのリンクだけでなく、無関係の企業や同種類の商品を扱う企業のサイトに紹介コラムやバナーを掲載し、自社サイトへの導線を引くのです。そして、効果が見られないからといって1回の告知で止めるのではなく、プロモーションを継続的かつ多発的に行うことでユーザーに信頼感を与え、商品のブランド価値を高めるのです。

実際に手に取って見られるツールを活用して、サイトのプロモーションを行うことも重要です。パンフレット、チラシ、DM などの媒体から、テレビやラジオ、新聞などの既存メディアを利用し、ウェブ情報を告知するのです。そうすることで、ユーザーの目に留まる機会は当然増えていきます。

例えばテレビでは、限られた時間内で魅力のすべてを伝えることは困難です。雑誌では、限られたスペースで細かいスペックを紹介するのは限界があり、また、情報が更新できないなどの不具合もあります。そのため今では、必要最低限の情報だけを発信し、「詳しくはウェブサイトへ」というパターンが流行となっています。ウェブサイトだと、時間制限はなく、ユーザーは見たい時にいつでも見ることができます。また、情報の即更新が可能で、常に最新の情報を発信することができます。さらに空間的制限もないため、マニア好みの詳細な情報もほぼ無制限に掲載が可能となります。ですから、ウェブとほかのメディアを切り離して考えるのではなく、互いを連動させて上手にウェブに人を集める方法を考えなければいけません。

マーケティング担当者の役割変化

オンラインマーケティングは特別なものではなく、普通のマーケティングの上に成り立つものですが、ネットユーザーを対象とするため、これまでとは少し違った視点を持つことも必要です。

ネットユーザーの行動様式は、①製品やサービスに「Attention(注目)」する、②「Interest(関心)」を持つ、③その情報をさらに詳しく「Search(検索)」する、④最終的な「Action(行動)」=購買行動に移る、⑤商品や購入元企業への満足感などを他者と「Share( 共有)」する、⑥顧客となったユーザーが、別の顧客に「Recommend(推薦)」する、というのが一連の流れです。

特に⑤に関しては、ネット以前では自分の知り合いの範囲内に口コミなどで情報提供していましたが、現在ではブログやソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)などを通じて、広範囲に情報発信します。また、⑥の顧客ユーザーと協力体制を確立することで、より多くのユーザーに推薦してもらえる可能性は高くなり、最終的には企業のブランディングやコーポレート・アイデンティティーの構築にもつながっていきます。

今お話したように、ブログやSNS を中心としたCGM(ConsumerGenerated Media)を介し、「Share」から「Recommend」への過程は急速に進展します。CGM の影響力はどんどん大きくなっており、商品力や企業イメージをも左右します。しかし、CGM に対して情報のコントロールはできません。ではどうすればいいのか。消費者で作るブログなどでは、10 人の書き込み者がいれば、必ず1人がオピニオンリーダーとなっています。そういうインフルエンサー(中心人物)と信頼関係を築いておくことが重要なのです。そうすれば彼らは良い情報を発信してくれます。

もう1つ、企業側からも正確な情報をタイムリーに発信することが必要です。例えば、車がリコールになる噂が出た場合、企業としてはリコールにはならない根拠の情報を発信しつつも、万が一そうなった場合の対応や取り組みをきちんと情報提供するのです。そうすることで、悪い噂の拡散は防げます。情報をコントロールしようとすると、ネットユーザーの心は離れていきます。ですから、信頼できる企業の情報を、担当者自らの声として発信し続けることがキーとなっていくのです。

ウェブ営業の重要性に、熱心に耳を傾ける参加者たち
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