1972年静岡県生まれ。湘南工科大学電気工学科卒業後、94年にパルステック工業株式会社に入社。光ディスクの規格・品質を計測する評価装置の設計および開発に10年間従事した後、海外向けカスタマーサービス部署を経て、2007年にLAに赴任。
1994年にパルステックに入社後、10年にわたりDVDやBlu-rayなど光ディスクの規格や品質を計測する評価装置の設計・開発に関わりました。具体的には電子回路を設計したり組み込み用のコードを書いたりという仕事です。その中では、例えばデジタル回路を極めるなど専門家になる道もあったのですが、一部を知るのではなく全体を捉えたいと、デジタルもアナログ回路設計も制御も組み込み用ソフトもとさまざまなことをやらせてもらいました。10年経った時に、海外向けカスタマーサービス部署へと異動。せっかく機械のいろいろなことを学んだのだから、その外側に手を出していくのも道ではないかと思ったのです。
また理系の人間にしては珍しくと言うのか(笑)、お客様と会って話をするのも好きだったので、設計の分野では逆立ちしてもかなわないくらいもっと上がいるけれど、電気やソフトの知識があってなおかつお客様とコミュニケーションをきちんと取る能力を一人の人間が持っていれば、自分にしかない強みになるのではないかと考えたのです。
海外向けカスタマーサービスに異動といっても英語は全然ダメでした。でも異動後のやりとりは基本は英語。やらなければならない環境にいると一生懸命やるものですね(笑)。そのうちに私が設計にも関わったBlu-ray計測器のアメリカでの売上が上がってきたこともあり、現地にカスタマーサービスがいたほうがいいだろうと、2007年にロサンゼルス駐在となりました。
ところが10年頃からのネットストリーミングの台頭により、光ディスク計測器の需要が減少。光ディスクがいずれなくなることは誰もが分かっていたので、日本の本社も含め、新しい方向を見つけなければ将来がないと痛感していました。経営的に非常に厳しい時期が続き、いろいろと模索していく中で、13年にX線を利用した残留応力の計測器(上写真)を発売。今、これが当社の主力商品になっています。
ちなみに残留応力とは、物体に対して外から加わる力がなくなっても内部に残っている抵抗力のこと。例えば硬い金属でも、加工や熱処理条件により残留応力が残り、そのせいで時間が経つと疲労破壊の原因になってしまうことがあります。これまでは残留応力を測るためには大型冷蔵庫くらいの大きさの装置が必要で、かつサンプルをカットして計測しなくてはならなかったのですが、当社が開発したものはポータブルに持ち運べ、サンプルをカットする必要もなく、短い時間で測れる画期的なものだったのです。日本では自動車関連メーカーさんを中心にマーケットが広がっています。一方でここアメリカの市場はまだ開拓途上です。当社の知名度や価格というだけでなく、必要な方にこの計測器の情報を届けられていないのが最大の課題だと考えています。
売るのは簡単ではありませんが、やはり売れた時はすごくうれしいですね。実は日本では営業の経験がなかったのですが、ここで残留応力計測器を販売し出してから見よう見まねで営業を始めました。一人オフィスでほかに人もいませんし、泣き言を言っていても始まりません。やってみたら何とかなるものだと思いましたが、まだまだチャレンジの途中です。このX線残留応力測定器をきちんと米国市場にいき渡らせることが今後の目標です。
Pulstec USA, Inc.◎パルステック工業株式会社の子会社として1996年に設立。南北米国市場を担当。親会社のパルステック工業株式会社は69年の設立以来、産業用電子応用機器、検査装置の開発に取り組んできた。