2017/7/19
去る7月19日、トーランスのミヤコハイブリッドホテルで、「2017年度U. S. Educators to Japan(USEJ)プログラム」の報告会が開催された。当日は、同プログラムで訪日したアメリカ人教育関係者ら5人が集合。JBA関係者らを前に、日本での貴重な体験を報告した。
日系企業の駐在員子弟を受け入れるアメリカ現地校への謝意と、対日理解の促進を目的とするUSEJプログラム。JBAでは毎年、ロサンゼルス、サウスベイ、オレンジ・カウンティーの学校を中心にアメリカ人教育関係者らを選抜。今年は8人を選び、6月18日から29日までの旅程で日本を訪問。東京、広島、奈良、京都で日本の教育や文化を学んだ。
8人のうち、この日の報告会には5人が出席。最初に尼崎教育文化部会長が挨拶し、同プログラムにより500人以上の教育関係者を日本に派遣した実績を紹介した。また、この資金源となるJBA Foundation Charity Golf Tournamentが報告会の前週に開催され、今年も大成功を収めたことを報告。トーナメント後のアワードディナーで今年の訪日記録ビデオが上映され、ゴルフトーナメント参加者らから同プログラムに対しさらに深い理解を得ることができたと語った。
次に、訪日メンバーが自身の体験を紹介。最初に、今年のグループリーダーであるAaron Jetzerさん(Culverdale Elementary School, Irvine)が報告に立った。AaronさんはJBAに謝意を伝えた後、「日本はとても親切で丁寧な国でした」と総括。日本人が自国の伝統や習慣を誇りにしていることに感銘を受けたとした。また、現在校長職に就いている自身の観点から、日米の違いをこう語った。
「日本の学校には素晴らしい先生方がたくさんいらっしゃいましたが、校長先生が表に出てくることはあまりありませんでした。私も校長ですが、同じく校内で生徒や家族と関係を構築するのに時間がかかりました。しかし今では、『見える存在』になることを常に心がけています。校長は特別な存在ではなく、学生に最高の教育機会を与えるために働く教師の一人に過ぎません。日本でももっと校長が『見える存在』になればいいと感じました」。
また、ある日本人女子学生との会話から、彼女の一日が通学、授業、課外活動、宿題だけで終わっていることを知り、学校とプライベートのバランスの重要性を説いた。
次にJustine Langさん(Arnold Elementary School, Torrance)が報告。自分にとってのUSEJ最大の収穫は、日本社会が文化や伝統、自然、地域に敬意と感謝の気持ちを持つことで成立していると知ったことだと説明した。また、日本の学校で行ったデモ授業の経験から、うなずいたり微笑んだり、ハイファイブをしたりするジェスチャーが言葉以上に重要であると再認識。「ジェスチャーは、『先生が自分を気にしてくれている』という思いを生徒に抱かせることができます。特に英語が不得意な生徒を世界中から受け入れているアメリカの学校では、先生のジェスチャーが円滑なコミュニケーションに不可欠であると確信しました」と語った。
次に登場したKristy Mack-Fettさん(Ocean Charter School, Los Angeles)は、日本は小学生まではとても自由を謳歌しているように見えたと感想を説明。「しかし、中学校に入った途端、現実社会に追われるような感じで、将来のために勉強や塾に忙しくしているようです。もちろんアメリカにも似た傾向があり、大学進学も大変ですが、それでも自分自身のことを考えながら人生を見つける時間があるように感じます」と続けた。アメリカでは人生を冒険する時間を持つことで熱意ややる気が生まれやすいが、何事にも努力する姿勢は日本の方が身に付いているとし、これら両方のバランスをうまく取りながら、学校を卒業した時に生徒がどんな将来像を描いているかを重視していきたいと語った。
次にKim Patrickさん(Jeffery Trail Middle School, Irvine)が報告。まずは日本人の親切さ、他人に対する思いやりにとても感動したとし、自身が歴史の教師であることから奈良・京都の訪問が印象的だったと語った。特に心に残ったのは、ホストファミリーが連れて行ってくれた奈良県の矢田寺。6月という季節柄アジサイが満開だったそうで、これほど美しい光景を目にしたのは生まれて初めてと、その感動を熱く語った。
最後にBonnie Harrisさん(College Park Elementary School, Irvine)がスライドを使いながら報告。たくさんの写真を利用し、滞在中に行ったプログラムや訪問地を全て紹介した。学校訪問ではアメリカにはない給食を見学。生徒自ら配膳や片付けを行う責任ある行動に感銘を受けたと語った。また、広島では広島平和記念公園や広島平和記念資料館を訪れたことを紹介。博物館では ガイドや被爆者の話のおかげで、原爆が人間界に与えた影響や今後の世界における核兵器の意味など、普通の観光では体験できない充実した学びの連続だったと語った。5人の報告が終了し、最後に石川JBA会長が挨拶。「皆さんの報告はどれも熱意がこもっており、日本人である私が逆に日本を再発見させていただきました。また、皆さんは日米の差異を学んだことで、在米日本人家族や生徒への理解が深まったと思います。同時に、USEJは今後も続けていくのに十分な価値があることも分かりました。何より、皆さんがこのプログラムを楽しんでくださったことが感動的でした」。
その後、複数のテーブルに分かれてランチを食べながら、参加者らは発表の中では語り尽くせなかった日本での体験を熱く話していた。