2024/9/2
去る7月30日(火)、企画マーケティング部会主催による、第252回JBAビジネスセミナー「今日から業務に活用できるAI – 体験セッション&デモ」をオンラインで開催した。
[講師プロフィール]
梅村康夫さん
名古屋市生まれ。
東京で13年間企業向けシステム導入業務に従事した後、2003年に渡米し日系大手システム会社のサンディエゴ営業拠点を設立・運営。10年にCalsoft Systems入社。トーランスオフィスに在籍しながら米国・メキシコ各地域のビジネス開拓を担当。20年よりテキサス拠点長兼任。22年よりメキシコ法人代表兼任。
https://www.calsoft.com
今回のビジネスセミナーは、より身近になった生成AIをいかに業務の効率化に役立てるかをテーマに掲げ、Calsoft Systemsの梅村康夫さんが解説した。最初に梅村さんは、参加者に対して実際にAIを使ったことがあるかどうかのアンケートを取った。
その結果を受けて梅村さんは、「プライベートで使ったことがある方が多いようですね。一方で全く使ったことがない方が30%いらっしゃいます。まず、AIとは何かついて説明します。皆さんがよく聞くのは『ChatGPT』かもしれません。この『ChatGPT』に代表されるように、AIというのは深層学習の手法を使った大規模言語推論モデルであって、ニュアンスや文脈も汲み取れる点が画期的と言えます。さまざまな検索エンジンを駆使し、チャット形式で情報が入手できるようになったことで話題になりました。このAIは、システムメッセージ(AIモデルの開発者がAIに対して設定する、AIの動作や応答の仕方に関する基本的な指示やルール)、ユーザーメッセージ(ユーザーからAIへの質問や要求)、アシスタントメッセージ(AIがユーザーに返す応答)の3部構成となっており、AIは最も正確な答えを選ぶために、システムメッセージに登録されたルールに基づいて答えの候補をたくさん予測します。その中で自信のある答えほど、良い答えとして返ってきます。ここで注意したいのは、モデルによる回答はあくまで予測であるという点です。判断する際の参考程度に活用することをお勧めします」と、生成AIの基本情報について語った。
さらに、少し前にリリースされた「GPT-4o」を最新版とする「ChatGPT」 と、マイクロソフトの「Copilot(「Microsoft 365」や「Edge」ブラウザに統合されたAIアシスタント)」を比較しながら、梅村さんは次のように解説した。「『ChatGPT』 の4以上は基本的に有料であるのに対し、『Copilot』は無料です。回答のベースとなるのは、『ChatGPT』の無料版はある程度の時期までの情報です。つまり、昨日や今日など最近のことに対して回答させようとしても、昨日や今日のことに関しては回答してもらえません。一方の『Copilot』は昨日の情報でも対応が可能です。さらに、『ChatGPT』では、ユーザーが入力した情報がAIの学習に使われる初期設定(変更可能)になっているのに対し、『Copilot』では、入力した情報が保護され、AIの学習には使われません。このようにセキュリティーに関しても、AIを使用する際には是非意識していただきたいところです」。
次に梅村さんは、AIの仕組みについて説明した。「AIはユーザーが入力した質問をまず数値化し、その数字を使ってデータベースから関連する情報を探し出します。言葉そのものを理解するのではなく、一度数字に変えて処理するのです。また、ユーザー側が出す指示をプロンプトと呼びます。プロンプト・エンジニアリング(AIモデルに対して望ましい結果を得るために、最適な質問や指示を設計・調整する技術およびプロセス)では、皆さんも経験があると思いますが、こちらが出した指示に対してあまり良い結果が返ってこないこともあります。その原因は指示の出し方が良くなかったからと考えられます」。
そして、より精度の高い回答を得るためのゴールデンルールは次の通りとのこと。
①礼儀正しくあれ:入力のプロフェッショナリズム、明快さ、詳細のレベルも反映させながら応答を返すため。
②明確な指示を出す:何を期待しているのかを事前に伝えることで、極力期待に沿った回答を準備させるため。
③あいまいな回答を避けさせる指示を出す:AIが想像で回答を準備するのを極力避けるため。
④フィードバック:何がうまくいっているのか、何が改善されるべきなのかをモデルが理解することができ、ユーザーのニーズにより適切に対応することができるため。
続いて梅村さんは、検索エンジン「Bing」から「Copilot」を起動し、実際のデモセッションに移行した。「プロンプト・エンジニアリングのテクニックを紹介します。まず、『あなたは優秀なビジネスアシスタントです』といったような役割をモデルに与えます。明確な指示を出し、回答例や参照先も提示しながら、タスクをシンプルに分解し、一つずつ回答を得るようにしてください。そして、急がず、モデルに考える時間を与えます。例えば、『準備ができたら教えてください。よく考えてから回答してください』と伝えます。分からない場合は『分からない』と回答させるようにし、最後に命令を繰り返すことが有効です」。
次に、接待用レストランをAIにサーチさせるデモを、「あなたはエグゼクティブアシスタントです。来訪があり、接待をすることになりました。レストランリストを送りたいので3.5以上の評価が付いているレストランを5店舗リストしてくれますか?お客様からの希望情報は以下の通りです。①人形町・水天宮界隈、②あっさりめの日本食希望、③金曜日の午後7時に予約を入れたい、④お客様は商社社長、部長、課長の3名、⑤居酒屋はNG」というサンプル指示文を用いて行った。
また、「週末に楽しめるアクティビティーを教えてください」というプロンプトに関して、ユーザーからAIへの役割設定(家族向けアシスタント、ビジネス向けアシスタント、健康アドバイザー、旅行プランナー、フィットネストレーナー)によって、結果にどのような差異が出てくるかを紹介し、いかに役割設定が重要であるかを強調した。さらに、マーケティングにAIを有効活用する手法として、顧客のレビューから実際にその顧客がどのような感情を抱き、企業側はどのような改善に取り組むべきかを分析、提案することができる「感情分析」の結果も紹介した。
その後、AIをアシスタントとして利用してプレゼン資料を作成する方法、Eメールの英文下書きの作成方法、「Teams」と「Coplilot」を連携させ、「Teams」で過去に実施した会議日時の掘り起こす方法をデモンストレーションした上で、「ERP」、「CRM」のような基幹業務システムとAIを連携させることで作業時間を大幅に削減する方法についても触れた。
最後に梅村さんは、まとめとして「AIを効果的に活用するためには、より良いプロンプトの記述方法を知り、これを常に意識して対話することが重要です。また、AIは業務アプリと密接に連携させることで、普段のデスクワークをより効率的かつ便利にしてくれます。さらに『ERP』や『CRM』などの基幹業務システムと連携させることで、業務プロセスの効率や信頼性の向上にも寄与します。AIを使いこなすには、常に推論モデルであることを念頭に起き、AIと人間のそれぞれの強みを活かして協働していくことです」と語り、質疑応答に移った後、セミナーを終了した。