2022/11/27
去る11月7日(月)、米州住友商事メディア&デジタル事業グループ長(LA)の小久保岳人さんを講師に招き、「ユーザから見たデジタル化時代の企業を取り巻く機会・課題・打ち手と事例」と題したウェビナーを開催した。
[講 師]
小久保 岳人さん
SVP and GM, Media & Digital Business Group, Sumitomo Corporation of Americas
住友商事入社後、複数のIT/Webサービス事業開発、事業投資、事業会社経営に従事。インドネシアEC事業PT Sumitomo E-Commerce IndonesianのPresident Director、住友商事DXセンター勤務を経て、2019年Insight Edgeを設立し、CEOに就任。現在同社顧問。22年5月より現職。21年度日本貿易会特別研究会「デジタル新時代と商社」委員。
最初に小久保さんは、「ユーザ視点で今のDX時代をどのように捉えたらいいのか、私の過去5年間の経験を基に、参加者の皆さまと学びを共有できればと思い、今日はお話しさせていただきます」と今回のセミナーの趣旨を説明した。続いて、DX時代における事業経営の内憂外患について「業界の垣根がイノベーションによって低くなっています。そして、事業に携わっている我々は社会的要請としてサステナビリティ経営、グリーンやクリーン化、個人情報管理などに力を入れなくてはいけない状況です。同業他社が次々にデジタル化対応し、自分の会社も変化を迫られている中、いかに社内で変革マインドを醸成し、組織や制度を設計して実践していくかが重要になってきます」と述べた。そして、デジタル化時代のチャンスとは、「企画を立てて、事業をつくり商品やサービスをたくさん販売して、それを磨き上げることで生まれる事業成長」だと語った。
次に、そのチャンスの前に立ちはだかる課題を、経済産業省の「DXガイドライン」で指摘されている失敗ケースから抜粋して次のように紹介した。
①戦略なき技術起点の実証実験(PoC)は疲弊と失敗のもと。
②経営者が明確なビジョンがないのに、部下に丸投げ。
③仮説を立てずに実行すること、失敗を恐れて何もしないこと。
④これまで付き合いのあるベンダー企業からの提案を鵜呑みにしてしまう。
⑤事業部門がオーナーシップを持たず、情報システム部門任せとなり、開発した情報システムが事業部門の満足できるものとならない。
⑥要件定義を請負契約にした場合、ユーザ企業が自身のITシステムを把握しないまま、結果として、ベンダー企業に丸投げとなってしまう。
⑦刷新後のITシステムは継続してスピーディーに機能追加できるようなものにするとの明確な目的設定をせずに、ITシステムの刷新自体が自己目的化すると、DXにつながらないITシステムが出来上がってしまう(再レガシー化)。
失敗を回避するための打ち手(対策)として、小久保さんは「どこに向かって進みたいのかをまず明らかにし、いかに推進基盤を構築するかに取り組みます。そして何より大事なことはオペレーションプロセスの再設計です。常に本質的な経営課題とは何かについて考えながら、オペレーションを続けることで磨き上げていくことが重要です」と、「本質的な経営課題」を突き止め、「打ち手を企画」し、「仮説検証・商用化」を行い、「オペレーションで磨き上げる」という「正の循環」を繰り返す成長サイクルを形成することが鍵になると強調した。
続いて、小久保さんは住友商事グループのデジタル化の事例について、DXセンターというデジタル化を推進する部門を立ち上げ、現中期経営計画では、「次世代エネルギー」「社会インフラ」「リテイル・コンシューマー」「ヘルスケア」「農業」という分野を「次世代成長戦略テーマ」として設定し、サスティナブル経営とデジタル技術活用を意識しながら注力していることを紹介した。
最後にまとめとして、「経営層のテクノロジーへの理解と組織・制度設計」「推進プロセス整備・標準化」「(可能なら)内製エンジニア体制の整備」の3点が、デジタル化による事業成長には重要だと強調した上で、「Digital Transformationとは、ビジネス課題に対してデジタル技術を掛け合わせて価値創造や変革をもたらす、つまりビジネスそのものです」と結び、セミナーは幕を下ろした。
推奨本(抜粋)
『ジョブ理論』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
『イシューからはじめよ』(英治出版)
『クリエイティブ・マインドセット』(日経BP)
『ビジネスプロセスの教科書』(東洋経済新報社)
『プロジェクトリーダーの教科書』(かんき出版)