JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

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2024/12/2

企画マーケティング部会 第255回JBAビジネスセミナー 「温室効果ガスのスコープ2排出量(主に電気の購入に起因する排出量)はどうやって減らすの? ~再エネ証書って何?~」報告

去る10月17日(木)、企画マーケティング部会主催による、第255回JBAビジネスセミナー「温室効果ガスのスコープ2排出量(主に電気の購入に起因する排出量)はどうやって減らすの? ~再エネ証書って何?~」をオンラインで開催した。

岡部勇士さん[講師プロフィール]
岡部勇士さん

Sumitomo Corporation of Americas
福岡県出身。2014年JX日鉱日石エネルギー(現ENEOS)入社。19年住友商事入社。23年より現職。シリコンバレー駐在。再生可能エネルギー証書、カーボンクレジットなどの環境関連商品のトレーディング、Climate-techのスタートアップへの投資および投資先ポートフォリオ起点での事業開発を担当し、北米のエネルギー関連新規プロジェクトに従事。


「再エネ証書」で再エネ電力の環境価値を購入

岡部さんは、通称GHG(Greenhouse Gas)と呼ばれる温室効果ガスの排出量を、多くの企業が2030年、40年、50年と節目ごとに目標を持って削減していこうという取り組みを行っているが、その排出量が3つのカテゴリーに分けられているとし、それぞれにどのような意味があるのかについて最初に解説した。「各企業によるGHG排出量は、Scope1、Scope2、Scope3という3つのスコープに分けられています。Scope1は企業が所有または管理する排出源からのGHGの排出量、Scope2は他社から供給された電気、熱または蒸気の生成に起因するGHG排出量、そしてScope3は企業が所有または直接管理していないが、その事業活動に関連する他社からのGHG排出量を指します。業界によって、これらのカテゴリーの比率は大きく変わりますが、Scope3が広い範囲をカバーしていますので、これが企業活動の8割、9割に及ぶという会社が多いという印象です。Scope3は言い換えると、他社のScope1、2に該当します」。

続いて、話題は、今回のセミナーのメインテーマである、前述の3つの中のScope2、つまり、他社からの電気や熱の購入に伴うGHGの排出量の削減方法に移った。「どうやって減らすかに関しては、やはり再エネの導入を進めることが一番大きなソリューションになってきます。この再エネ由来の電力調達には主に4つの方法があります。1つ目は、再エネ発電設備を建設し、発電するという自家発電・自家消費。2つ目は小売電気事業者から再エネ由来の電力を購入し、従来のものから再エネメニュー(※再生可能なエネルギーを使用した電力を供給する選択肢。太陽光発電や風力発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電など)に切り替える方法。3つ目は、太陽光発電、風力発電といった再エネ発電設備の電力を長期契約で購入するコーポレートPPA。そして4つ目が再エネ電力の環境価値のみを証書で購入、つまり再エネ証書の購入です」。

SCOPE2の削減/再エネ由来の電力調達方法の比較。「SCOPE2の削減/再エネ由来の電力調達方法の比較。


「再エネ証書」のアメリカでの価格は上昇の読み

岡部さんは、4つ目の「再エネ証書」について次のように紹介した。「電力の購入契約とは別に、環境価値自体を購入するという非常にシンプルなものです。そもそも、自然エネルギーで発電した電力、原子力で発電した電力、化石燃料で発電した電力、これらは全て同様に電力として使用されます。言い換えれば『電力には色がついていない』のです。そして、発電された電力を別の場所で使う場合にはグリッドを経由しますが、グリッド内の電力を追跡する方法はなく、エンドユーザーにはどのような由来の電力源かということまでは伝わらず、単に電力として供給されます。そこで再エネ化を図っていきたいエンドユーザーとしての企業、つまり、需要家が購入するのが再エネ電源によって生み出された電力の属性証明が『再エネ証書』なのです」。このように、「再エネ証書」とは「再エネ電力」を示す属性証明であり、ユーザーがそれを購入することで自社の再エネ化を図るものだ。

再エネ証書が使える地域については、「欧州、北米など名称は異なるものの、グローバルに広範囲にわたって浸透しています。日本には3種類の証書が存在しています」と述べた。

グローバルで浸透している再エネ証書、再エネ証書を採用している地域。グローバルで浸透している再エネ証書、再エネ証書を採用している地域。


また、「発電事業者は、再エネ証書がすでにグローバルな認知度を得ており、売り先もあることから、有効な商材であると認識しています。そして、再エネ証書を販売することで、電力を販売する以外の形で追加の収益を得られるというメリットがあります」と、再エネ化を図る需要家だけでなく、再エネ証書は発電事業者にとってもメリットがあると岡部さんは強調した。 

次に、よく質問を受けるという「再エネ証書の価格」について岡部さんは、「国によって再エネ証書の価格は変わってきます」と回答し、「基本的には、その国の中で作られ、そこで消費をされるということがスタンダードになっていますので、その国ごとの再エネの需給で価格が左右されます。また、電源の種類、たとえば太陽光や風力なのか、それとも水力やバイオマスなのかによっても価格は変わります。さらには証書の発行年によっても変わり、ビンテージの古い発行年だと価格が下がります」と解説した。

さらに、「今後、アメリカにおける再エネ証書の価格の見通しについてどのように考えていますか」という寄せられた質問に対しては、「2025年は再エネ(の発電所)が活発に立ち上がっていく局面になりますので、再エネ電源からの発電量が増える、つまりは証書もたくさん発行されるということで、足元の価格は定位推移していくと見ています。ただし、その後の2030年にかけては基本的に価格は上がっていくと見ています。その背景には、北米におけるEVの普及とデータセンターの増加があります。データセンターの電気需要量増によって、電力需要が非常に大きく伸びていくと考えられます。また、企業が25年、30年にCO2削減目標のマイルストーンを設定している関係から、そのマイルストーン前には多くの企業が証書の買いに走るということが十分考えられますので、基本的に再エネ証書の価格は上がっていくと見ています」と回答、再エネ証書の利用価値がますます上がる可能性があることを示唆し、セミナーは幕を下ろした。

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