2023/1/1
去る12月15日(木)、The J. Morey Company, Inc.の馬場さんを講師に迎え、取引信用保険のビジネス拡大への活用をテーマにしたビジネスセミナーをオンラインで開催した。
[講 師]
馬場弘樹さん
Vice president, Japanese Practice Department Leader The J. Morey Company, Inc.
2012年UCLA数学科を卒業。ロサンゼルスの日系保険ブローカーのYamasaki Insurance Agencyでの勤務を経て、22年よりThe J. Morey Company, Inc.に移籍。現在はJapanese Practice Departmentの責任者として日米ビジネス関係の強化に従事。
最初に馬場さんは、「取引信用保険と聞いて、聞き慣れないと思う方も多いと思います。実は、取引信用保険には160年以上の歴史があるのですが、日本で認可されたのは比較的最近、1990年代になってからです。つまり、欧米に比べると、取引信用保険の日本での認知度は、他の保険種目よりも低いのが実状です」と語った。
続いて、被保険利益と保険種目の関係性について次のように解説した。「費用を填補する保険は会社財産の損失に対する財物保険、社員の怪我に対する労災保険、訴訟費用に対する賠償責任保険に分かれます。さらに収益を填補する保険には、休業中の逸失利益に対する休業補償保険と、今回のトピックである取引先の債務不履行に対する取引信用保険があります。つまり、取引信用保険とは、取引先の債権不履行による回収不能な収益の損害を補償する保険であり、保険対象となるのは全取引先から1社指定までを含む取引先、補償額は会社が被った債権額に補償率をかけた金額となります」。
そして、馬場さんは「会社が取引先から代金が支払われないとなった時に、取引信用保険に入っていれば、保険会社が契約に従って保険金を支払ってくれるだけでなく、回収作業も担当してくれます」と、取引信用保険の仕組みについて大まかに解説し、それだけにとどまらない有用性があると続けた。「取引信用保険は回収不能損害をカバーするだけでなく、信用調査や与信管理、そして債権回収のサポートも行うことで、会社のキャッシュフローを安定化させるのです」。
さらに馬場さんは、債権が回収不能になる二つの理由を紹介した。「一つ目の取引先の倒産や支払遅延(クレジットリスク)には、景気後退、労働コストの上昇、物価の上昇、不安定な物流、自然災害、市場競争などの要因が絡んでいます。また、二つ目の理由となる取引先国での非常状態(カントリーリスク)を招く要因には、輸出入制限、送金不能、接収、国有化、戦争、地震などが挙げられます。取引信用保険はクレジットリスクだけでなく、カントリーリスクにも対応可能です」。
取引信用保険を活用する理由を、「多くの場合、自力でのリスク査定は困難と言わざるを得ません。取引先の会社の内情を把握することは難しいですし、カントリーリスクについても考慮に入れる必要があります。さらに、多くのリスクは流動的に変化していますから、与信管理は1回やれば終わりではなく、定期的にアップデートする必要があり、自力では大変な作業になってしまいます」と挙げた上で、自社だけの力に頼らず取引信用保険を活用すべきだと語った。
そして、馬場さんは「保険がないと取引に対して保守的にならざるを得ません。一方で、取引信用保険を活用することで、今までより大きな取引金額のビジネスができたり、取引先に有利な支払い条件を提示したりすることが可能となります。それによって競争力が拡大するだけでなく、未回収売掛金が縮小され、キャッシュフローが改善するので、次々と新しいプロジェクトに着手することが可能となります」と、いかに取引信用保険がビジネス拡大に使えるツールであるかを強調した。
最後に馬場さんは、良い保険の条件について語った。「保険で損失をカバーするだけでなく、保険を活用することで損失を未然に防ぐ機能も持ち合わせていることが良い保険だと言えます。一番良いのは損害が発生しないことです。ですから、損害時のサービスが素晴らしい会社というだけではなく、損害を防ぐためにサポートしてくれる会社が良い保険会社だと思います」。