2021/9/2
去る7月22日、経営戦略の専門家を講師に招き、「コロナ禍から学ぶ危機対応としてのコミュニケーション及び事業継続戦略ウェビナー」を開催した。
[講 師]
デボラ・ナカトミさん
Nakatomi & Associates創業者。Walt Disney Company、CBS Television、the California Legislature、Japanese American Citizens Leagueを経て起業。ノーマン・ミネタ氏のドキュメンタリー『An American Story : Norman Mineta and His Legacy』の共同プロデューサー。2019年秋、旭日双光章を受章。
PRと経営戦略の専門家であるデボラ・ナカトミさんを講師に迎えたこのウェビナーでは、ジャパン・ハウス ロサンゼルス館長の海部優子さんがモデレーターを務めた。最初に海部さんが「私たちのジャパン・ハウスにもクライシスが突然やって来ました。施設を閉鎖したり、スタッフがリモートで働く状況に追い込まれたりなど迅速な対応が必要でした。過去15カ月のパンデミックの状況を振り返っていただけますか」と問うと、ナカトミさんは「パンデミックは、我々の人生の中でも最大の危機だったと言えるでしょう。しかもまだ完全に収束していません。しかし、企業の中にはすぐにこの状況に適応したところがあります。その違いは何でしょう? それは新たな計画を掲げて、すぐに動いたかどうかということです。クライアントである某企業は、2020年の1月か2月に危機が迫っているということを聞き付け、計画の策定に入りました。30カ所以上の拠点をシャットダウン、手袋やサニタイザーを大量発注しました。従業員の安全性と健康を最優先させたのです。鍵はリーダーシップ、迅速な行動、そして柔軟性です」と実例を紹介した。
次に海部さんが「大企業の場合、社内にHR専任のスタッフがいるが、中小企業はどのように対応したらいいでしょうか」と尋ねると、ナカトミさんは「リソースが社内にない時は社外のスペシャリストに助けを要請しましょう。専門家のアドバイスが無料なこともあるし、助けを積極的に求めることは重要です」と回答した。
さらに、「今回のような危機からどのようなことが学べるでしょうか」との海部さんの問いには、「私は何か悪いことが起きても、必ずそこから良いことが得られると信じています。多くのクライアントから聞いた声として、今回のパンデミックで『つながることの大切さを再確認した』というものがあります。家族とだけでなく、コミュニティー、同僚とのコミュニケーションがいかに重要かということを、私たちは改めて教えられたのです。さらに企業のリーダーシップや透明性が試された機会にもなりました」と、ナカトミさんは答えた。続けて、危機的事態が再発した際、オペレーションに混乱を生じさせないように、「クライシスプラン」を各企業が作成しておくべきだと強調した。「計画を作成するだけでなく、日頃からコミュニケーションの土壌を整えておくべきです。それによって、緊急な対応が迫られた時に、従業員は経営側の対応を信頼し、応じることができるからです」。ナカトミさんはリーダーシップとコミュニケーション、事前準備の重要性を繰り返し強調し、セミナーは終了した。