2022/10/3
去る9月14日(水)、第242回JBAビジネスセミナーをオンラインで開催した。講師を務めたのはSyscom Global Solutions Inc.の浜野玲さん。日系企業にとってのDX導入のメリットと効果的な推進方法について解説した。
[講 師]
浜野 玲さん
Syscom Global Solutions Inc.
2015年明治大学を卒業後、IT系企業でシニアクライアント・レプレゼンタティブとして大手電力会社を担当し、クライアント企業のデジタルイノベーション、業務改善に携わる。20年に渡米し、21年1月にSyscom Global Solutions Inc. に入社。
セミナーの冒頭、浜野さんは「DXとは近年非常に耳にすることが多いキーワードです。DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を導入することで業務プロセスを変革することです。しかし、取り組みの規模感によって、それが業務改善に終わるのか業務改革にまで広がるのか、さらには企業に変革をもたらすものになるのかなど、DXと一言に言ってもその内容はそれぞれのプロジェクトによって大きく異なってきます」と、DXの意味をおさらいした上で、なぜDXに取り組むべきなのかについて次のように解説した。
「あるコンサルタント会社の調査によると、テクノロジーへの適応が進んでいる企業は、より高度で効果的なIT投資を加速させることで、指数関数的に業績を伸ばしているという結果が出ています。コロナ禍が始まるまでは、それらの企業は直線的な成長を示していましたが、IT投資を加速させた企業はコロナ禍後、急速にその業績を成長させていることが分かります。これからの時代はDXを取り入れた企業の方が勝ち残る確率が高いということです」。
コロナ禍を契機に事業を取り巻く環境は劇的に変化している。「まず、顧客の要望レベルの変化です。『Amazon Prime』でオーダーすれば商品が翌日には届くというような状況で、サービスを受け取るサイドの期待値が非常に高くなっています。また、急激なインフレ、サプライチェーンの混乱、サステナビリティーへの企業責任など環境の変化も加速、さらにはコンプライアンス、セキュリティー、業界関連法といった法規制の変化も進んでいます。企業としては、加速するさまざまな変化に対応しつつ、(DXを導入することで)適応していくことが求められています」。
しかし、実際のDXプロジェクトの成功率は非常に低いと指摘した上で、浜野さんは、日系企業に絞って、「DX推進の壁」の乗り越え方を解説した。「まずは、経営幹部と事業部門トップ間での具体的なビジョンの共有です。関係する人数が多数となるため、それぞれの立場や役割が異なります。メンバーの認識を統一するためにはリーダーのビジョンの共有が必須です。そして、リーダーが孤立無援のプロジェクトにならないように、組織横断的な取り組みをサポートすることが重要です。その上で、DXの明確な目標を設定します。新規事業の創出、顧客体験のデジタル化、業務オペレーションの高度化といった、ビジネスにインパクトを与える結果を出すように設計すべきです」。
DXを継続的に推進する体制の構築には、次の3つの段階を踏むことを推奨した。「まず、フェーズ1として、DXの検証をスタートします。DX推進リーダーをアサインし、手始めに一部門でのみ導入します。フェーズ2では、複数のプロジェクトに広げてスケールを拡大します。フェーズ3では全社的なDX推進へとステップを進めます」。
では、前出の「デジタル人材の不足」という問題にはどのように対処したらいいのだろうか。「デジタル人材はビジネスサイドの人材、テクニカルサイドの人材の2種類に分けられます。ビジネスサイドの場合は、業務に精通している必要があるため、既存社員のスキルアップが有効です。一方、テクニカルサイドの人材に関しては、初期段階のみアウトソースを活用し、段階的にトレーニングなどを通じてスキルのトランスファー、社内化を図っていくことが有効だと考えられます」。
続いて短時間でアプリケーションを開発できるツールや、Syscom Global Solutions Inc.が手がけた過去のDXの事例などを紹介した後、質疑応答に移った。 「デジタライザーションも何も進んでいない組織でのDX推進法とは?」という質問に対して、浜野さんは「まずはITリテラシーが高くない方にも分かりやすい成功体験を提供することで、社内の人たちに『面白い、やりたい』と思ってもらえると、モチベーションに火がついて一気にDXが推進されることがあります」と回答し、セミナーを締めくくった。