2021/8/4
去る6月24日、「日本企業がアメリカでの事業を成功させるためにどのようにDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用できるか」をテーマにしたセミナーをオンラインで開催した。
[講 師]
橋本善永さん
Managing Director, USJP Business Advisors
外資系コンピューター企業、アーサー・アンダーセン、KPMG、日本のデロイト トーマツ コンサルティングを経て現職。USJPでは在米日系企業に戦略策定、経営アドバイザリー、DXなどのコンサルティングを提供。
[講 師]遠山明彦さん
President, USJP Business Advisors
約20年にわたり、ロサンゼルスのアーンスト・アンド・ヤング、アーサー・アンダーセンなどで日米企業に企業買収、システム導入などのサービスを提供。2009年より現職。全米の日系企業の戦略策定、事業展開、組織改革などを支援。
第1部で登場した講師のUSJPの橋本さんは、DXの背景にあるメガトレンドについて次のように説明した。「まず、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の成功がビジネスの常識を変えたということが言えます。日立製作所のようなモノづくりの会社もソリューションを提供する企業に変わっています。ハードウエア企業がソフトウエア企業を買収し、苦労しながら、その経験から多くのことを学んでいます。このトレンドはAI によって加速化されるはずです」。
次に世界のDXを牽引しているAmazonの成功の理由が紹介された。「ぜひ皆さん、『Amazon Day 1』で検索してみてください。毎日がビジネスの初日であり、昨日までどうであったかを考えずに、日々、スタートアップとしての意識を持ち続けるという意味です。顧客中心の会社としての姿勢を示しており、最新のテクノロジーで顧客サービスや物流を革新しています。Amazon流の顧客中心主義とは何でも顧客の言うことを聞くということではなく、顧客を研究し尽くすということです」。
橋本さんはさらに、世界中の企業がプロダクト中心から顧客中心へと移行しており、GAFAからも学びながら顧客中心にビジネスモデルやオペレーションを組み替えていると続けた。そして、具体的な顧客中心主義の例として、「UNIQLOは『外さないという安心感』、Amazonは『情報収集して比較できる万能感』、Costcoは『高品質のものが絶対に安いという確信』、McDonald’sは『どこでも同じという安心感』をビジネスモデルに掲げており、顧客を惹き付けているのは商品そのものではありません」と述べた。
また、「顧客中心主義のオペレーションとは何か」については、「『顧客の成功に全員がコミットする』『顧客との長期的関係を築くことをゴールにする』『購買前から再購買までの全サイクルを支援する』『顧客の使用状況をリアルタイムに知る』『顧客に合わせて価格とオファリングを柔軟に変える』『顧客に最大の自由を与える』ことです」と解説した。
2部では、遠山さんが「カリフォルニアの日系企業のDXの進め方」を紹介した。実践アイデアのその1は、ツール導入によって業務プロセスを改善することで、これにより社員のITリテラシーの向上など本格的なDX実現の準備ができると語った。次にクラウドHRシステム導入による人事制度の高度化を通じて優秀な人材を採用・育成する方法や、最新のコールセンターシステム導入による顧客体験の改善も説明された。
さらにサブスクリプション型ビジネスや業務請負型ビジネスの検討方法や参入アプローチを紹介した後、デジタルチャネルの活用法についても触れた。「顧客は何のためにウェブサイトを訪問するか、ビジターが欲しい情報が掲載されているか、一番使いやすいチャネルを持つ競合他社はどこかなどの視点で、皆さんのウェブサイトやデジタルツールをチェックしてみてください。ウェブサイト、YouTube、Facebookなどを販促やサービスに効果的に活用しているB2B企業はどんどん増えています」。
最後に遠山さんはアメリカの日系企業がDXで成功するためのポイントは「経営トップのリーダーシップ」と「試行錯誤から学ぶこと」と強調した。「そのためにはまず社長がDXを学んでください。重要事項はトップダウンで決定し、スピードを重視し、失敗は成功するための勉強と考えて、小さくても多くの施策を試してください」とメッセージを送り、DXセミナーが終了した。