2024/10/2
去る6月12日(水)から13日(木)にかけて、JBAとJCCNC(北加日本商工会議所)からなる日系企業代表団がカリフォルニア州の州都サクラメントを訪問し、カリフォルニア州の政府関係者らと日本とカリフォルニア州の現在および将来の協力関係について意見交換する場を持った。複数回行われた会議においては、特にイノベーション、貿易、クリーンエネルギーに焦点を当て、これらの分野における課題と日系企業のビジネスチャンスについて話し合った。
JBA:
南浦会長(Kintetsu Enterprises Company of America)、徳丸商工部会長(Pasona N A, Inc.)、酒井商工副部会長(Majordomo Komon)、坂梨商工部会員(Abeam Consulting(USA)Ltd.)
JCCNC:
五味会頭(NTT Research)、加藤ガバメントリレーションズ委員長(All Nippon Airways Co., Ltd)、新井ガバメントリレーションズ副委員長(Marubeni America Corporation)、Teraokaガバメントリレーションズ委員(Teraoka & Partners LLP)、杉原ガバメントリレーションズ委員(Idemitsu Americas Holdings Corporation)、洞JCCNC事務局長
まず、カリフォルニア州議会議員との会談には、日カリフォルニア議員フォーラムの3人の共同議長であるジョシュ・ニューマン上院議員、デイブ・コルテズィ上院議員、アル・ムラツチ下院議員をはじめ、2024年3月にカリフォルニア州上院議員団として日本を訪問したジョン・レアード上院議員、ビル・ドッド上院議員、ジョシュ・ベッカー上院議員が参加くださった。数名の議員ごとに3回に分けて行ったこの会談では、日本政府のスタートアップ支援状況、日本とカリフォルニア州の両地域におけるイノベーションの促進が主な話題として上がったほか、日本の終身雇用制度の影響、若者を支援することの重要性、マインドセット変革のための教育などについて議論した。
また、クリーンエネルギーに関して、カリフォルニア州と日本のさらなる協力関係の強化が不可欠ということで意見が一致したほか、カリフォルニア州の気候変動政策において、日本の水素エネルギー技術導入の可能性についても議論し、水素エネルギーの普及を促すには、税制優遇や補助金など政府のインセンティブが必要不可欠であるという意見も伝えた。さらに、カリフォルニア州は日本との運転免許証の相互利用協定を結んでいない唯一の西海岸の州であり、それによって同州の日本人駐在員にとって困難な状況が生じている点を指摘、議論したほか、カリフォルニア州気候変動関連開示法令(「SB-253」「SB-261」「AB-1305」)に関する多国籍企業に対応したガイダンスの必要性についても訴えた。
続いて、カリフォルニア州知事室ビジネス・経済開発局(GO-Biz)事務所で開催された会議には、カリフォルニア州副知事の参謀や、GO-Bizの代表が参加くださり、貿易・投資、気候変動イニシアチブ、インフラに焦点を当てた議論を行った。その中で、日本がカリフォルニア州の重要な貿易相手国であり、同地での雇用にも大きく貢献している点をあらためて認識いただいた。また、カリフォルニア州の再生可能エネルギー政策に焦点を当て、ロサンゼルス港におけるプロジェクトを含む日系企業による水素燃料電池技術の導入に関する進捗状況も報告。日本の水素エネルギー技術を用いた港湾荷役機械の導入には、州知事からの明確な指令と政府諸機関の密接な調整が必要であることを訴えた。さらに、カリフォルニア州政府による脱炭素ロードマップにおいて、日系企業が貢献できることは多々あることもあらためてお伝えした。また、GO-Bizからは、カリフォルニア州のクリーンエネルギー目標を支援するためのインフラストラクチャー・ストライク・チームや、エネルギー・インフラ資金調達メカニズムなど、州の主要イニシアチブについて紹介いただいた。
今年で23回目となるカリフォルニア州商工会議所(California Chamber of Commerce=Cal Chamber)との昼食会には、ジェニファー・バレラ会頭とスーザン・トールセン・スターリング副会頭が出席くださり、日本との貿易、日系企業によるカリフォルニア州への直接投資、さらに文化的、学術的な交流が今後より重要になってくると、歓迎のお言葉をいただいた。また、近年テキサス州やアリゾナ州に多くの企業が移転している点について、カリフォルニア州はコスト高に加え、多くの規制があるなど課題の多い環境であることを認識すると同時に、同州経済規模は世界第5位であること(カリフォルニア州を国に例えた場合)、法整備が他州に比べて進んでいること、3900万人の消費者市場があること、優良な高等教育機関が多く優秀な高学歴人材が豊富であることなどから、企業にとっては引き続き魅力的な場所であることを強調した。
Cal Chamberとの昼食会での記念撮影。前列中央がジェニファー・バレラ会頭。
訪問最終日には、今年度予算審議中の上院議会を表敬訪問。「日本は長年、投資、雇用、イノベーションなど、地域に根差し継続的に貢献してきた戦略的パートナーである」とレナ・ゴンザレス上院議員・上院多数党院内総務(Majority Leader of the California Senate)から紹介を受け、出席議員との交流を図った。
当日の出席議員らと記念撮影。
今回の訪問を通じて、訪問団とカリフォルニア州政府関係者は、今後カリフォルニア州と日本の経済的結び付きをさらに強化し、持続可能な取り組みを推進し続けることが重要だという点で意見が一致した。そして、グリーンポート、気候変動、観光などにおける継続的な協力の好例として、2023年のカリフォルニア州日本貿易促進ミッションの成功も挙げられた。南浦JBA会長、五味JCCNC会頭を筆頭とする今回の日系企業訪問団は、これらのイニシアチブをさらに推進していくことをあらためて決意したと同時に、カリフォルニア州と日系企業がビジョンを共有できていることも確認できた。今回の訪問が、カリフォルニア州と日本の長年にわたる関係においてさらなる一歩を踏み出す良い機会となったのは間違いなく、我々JBAとしても、これを糧に今後もさまざまな課題に取り組んでいく所存である。