2023/5/30
去る4月27日(木)に開催された「Select LA Investment Summit 2023」で、南カリフォルニアにおける海外直接投資報告書「FDI(Foreign Direct Investment) Report」の2023年度版が発表された。日本は直接投資において、今年も雇用者数、企業社数、総賃金いずれも1位となった。
JBAの協力団体、LAEDC(Los Angeles County Economic Development Corporation=ロサンゼルス郡経済開発公社)の傘下機構、WTCLA(The World Trade Center Los Angeles)は、4月27日(木)に、Hilton Pasadenaで「Select LA Investment Summit 2023」を開催した。同イベントは、南カリフォルニアにおける貿易の動向、ロサンゼルス郡での直接投資や市場の傾向について紹介するもので、毎回、国内外から多くのビジネスリーダーが参加している。JBAからも山本会長、商工部会の和田副部会長、酒井副部会長、安江専務理事らが出席。在ロサンゼルス日本国総領事館の協力により、JBAとしては初めて同イベントにブースの出展もした。
LAEDCのCEO/WTCLAのプレジデント、スティーブン・チャン氏を中央に、左から安江専務理事、酒井商工部会副部会長、山本会長、JBAブース設置に尽力いただいた西上領事。
当日は、ジョージ・チェン トーランス市長(中央)の姿も。
「キーノート&ランチセッション」のスピーチでは、Port of Long Beachのノエル・ハセギャバCOOが登壇し、「コロナ禍中に発生したサプライチェーンの問題が現在、正常化されつつあります。そして今、港ではトラックの排気量を劇的に軽減するための『クリーン・トラック』のプロジェクトに取り組んでいます」と、南カリフォルニア経済圏の窓口の役割を担う港の最新事情を紹介した。
続いて、GO-Biz(カリフォルニア州経済促進知事室)のエミリー・デサイ副所長が、「カリフォルニア州は、IT、製造業、健康関連、輸送、さらにはエアロスペースと実に広範な産業が発展し、学者、リサーチャー、エンジニア、起業家といった才能が次々に開花する土地です。移民の起業家も活躍しています。夢を叶えたい人には最適な土地です。皆さんがここで活動してくれていることに感謝します」と同州で事業に取り組んでいる人々にメッセージを送った。
「カリフォルニアは夢を叶えたい人には最適な土地」と語るGO-Bizのエミリー・デサイ副所長。
さらに、ロヨラメリーマウント大学助教授のドクター・リチャード・タンが、カリフォルニア州とテキサス州について、数々のデータを用いて比較しながら「カリフォルニア州は事業運営のコストが高額である一方、生産性が飛躍的に高く、コストをかけても投資する意味があります。テキサス州のコストはたしかに低いですが、産業の多様性においては鉱業が高い割合を占めており、多様性があるとは全く言えません」と、カリフォルニア州の優位性を結論付けた。
投資先としてのカリフォルニア州の優位性を強調した、ロヨラメリーマウント大学のタン助教授。
最後に、南カリフォルニア地域での直接投資に貢献した企業に提供される「Foreign Direct Investment Award」が、イギリスから進出し、ロサンゼルスのアーツディストリクトに飲食店とオートバイ文化の発信拠点を開設したBike Shed Moto Co. USAに授与された。
「Select LA Investment Summit 2023」で発表された「2023 FDI Report」の結果(日本は今年も、直接投資において雇用者数、企業社数、総賃金いずれも1位)を踏まえて、酒井商工部会副部会長が、LAEDCのCEOでWTCLAのプレジデントのスティーブン・チャン氏に対面取材を行った。一問一答の概要は以下の通り(以下、敬称略)。
酒井:LAEDCについて説明してください。
チャン:LAEDCは42年前に設立された非営利団体で、成長を続ける地域経済を創造し、構築することをミッションとして掲げています。ロサンゼルスの公的機関、民間企業、学術界、労働関係といったあらゆる分野の協力者と共に、当地の産業を成長させる取り組みを推進しています。そして、産業が成長することで、ロサンゼルス市民にとって労働の機会、起業の機会が拡大します。つまり、私たちの仕事は健全な経済を成長させることなのです。
酒井:JBAとLAEDCの関係について教えてください。
チャン:LAEDCとJBAは過去20年にわたって協働しています。この関係性はLAEDCにとって非常に重要であり、さらなる20年、そして100年と継続していくことを願っています。私自身はロサンゼルス市長のオフィスで働いていた時から、JBAが当地に進出している日本企業を代表して活動していることに注目していました。
酒井:それでは、外国の企業がロサンゼルス、そしてカリフォルニア州に投資する意義について教えてください。
チャン:簡単に言えば、今日のプレゼンテーションにもあったように、ロサンゼルスとカリフォルニア州は、ビジネスにかかるコストは非常に高騰していますが、同時に生産的な地域です。ここには多様な産業があります。よってリスク管理の面では、ロサンゼルスのように多様性に富む地域に投資することは、より安全だと言えるのです。また、多様な産業を擁するだけでなく、人材面においても多様です。その点で、国際的な企業においては、ロサンゼルス内で活動することで多様な市場にアクセスできるというメリットがあります。さらに人口です。ロサンゼルス都市圏の人口は2000万人と非常に大規模であり、この地でビジネスを展開することで一気に2000万人の消費者を相手にできるのです。最後にアクセスの良さです。当地にはロサンゼルス港とロングビーチ港、さらにはアメリカで3番目にフライト数が多いロサンゼルス空港があり、海外だけでなくアメリカ国内へのアクセスも抜群です。
酒井:今年も日本は南カリフォルニアへの投資国として1位になりました。しかし、この事実をより広く周知させるために、JBAや日本企業は何をすべきでしょうか?
チャン:ロサンゼルスの市場構成は複雑である分、自らそれぞれの市場に向けて積極的に知らせる必要があります。多くの日本企業は謙虚であり、自らの実績を語ろうとしません。だからこそ、日本企業とWTCLA、LAEDCといった他の組織との協働が有用だと思います。そして、ソーシャルメディアやブログの活用以外にイベントの開催も重要です。「Select LA Investment Summit」もまた、そのようなイベントの一つです。この機会を活用して、日本こそが南カリフォルニアへの投資国ナンバーワンだと発表することは実に大きな声明となり、多くの人々の耳に届くのです。
酒井:今後ますますJBAとLAEDCとの絆を強くするために、LAEDCのCEOとしてJBAに向けて具体的な提案やリクエストがあれば聞かせてください。
チャン:私からのリクエストは、JBAのメンバーにLAEDCのボードメンバーになってほしいということです。LAEDCの歴史の中で初めて高いレベルのポジションに就いたアジア系アメリカ人である私の仕事は、さまざまな背景を持つ人がボードメンバーの会合の場にアクセスできるようにすることだと感じています。ですから、私は全てのJBAのメンバーを歓迎する用意ができています。ぜひ、JBAのメンバーの皆さんも、LAEDCへの真のエンゲージメントの姿勢を示していただければうれしいです。
初めて同イベントに出展したJBAブースの模様。Sumitomo Electric U.S.A., Inc.、 MinebeaMitsumi、Lingo Miiの3社がビジネスを紹介。
初めて同イベントに出展したJBAブースの模様。Sumitomo Electric U.S.A., Inc.、 MinebeaMitsumi、Lingo Miiの3社がビジネスを紹介。
初めて同イベントに出展したJBAブースの模様。Sumitomo Electric U.S.A., Inc.、 MinebeaMitsumi、Lingo Miiの3社がビジネスを紹介。