2018/7/18
去る7月18日、トーランスのRedac Gateway Hotelにて、「2018年度U.S.Educators to Japan(USEJ)プログラム」の報告会が開催された。当日は同プログラムで訪日したアメリカ人教育関係者ら8人が集合。JBA関係者らを前に、日本での文化交流やホームステイの経験などを報告した。
USEJプログラムは日系企業の駐在員子弟を受け入れるアメリカ現地校への謝意と、対日理解の促進を目的とするプログラム。1975年の開始以来、40年以上の歴史を持つ。JBAでは毎年、ロサンゼルス、サウスベイ、オレンジ・カウンティーの学校を中心にアメリカ人教育関係者らを選抜。今年は8人が選ばれ、6月24日から7月5日まで、東京、広島、京都、奈良を訪れ日本の教育や文化を学んだ。
報告会では、はじめに録田教育文化部会長が挨拶。「今日は、南カリフォルニアで暮らす保護者に知ってほしいこと、英語でより上手にコミュニケーションを取るにはどうしたらよいか、そして皆さんが日本で体験したことのフィードバックの3点について、お話を聞けるのを楽しみにしています」と話した。
次に、8人の各参加者が順番に発表を行った。1人目の発表はCarol Alvaradoさん(Hickory Elementary School, Torrance)。「日本、そして日本人は調和が取れ、整理されていました」と、印象を語った。「訪問した学校で行われた式典では、生徒たちが自分たちの役割をよく理解して行動しているのが分かりました。また、屋上や校庭の植物も美しく整備されていることに感動しました」と話した。相手を尊重すること、はっきりと話すこと、目を見て話すこと…。教室だけでなく、他者と関わるにあたって大切なルールを日常的に指導されていることに感銘を受けた様子だ。
「確かに国によって文化は違います。でも、日本の子どもとアメリカの子どもで似ているところが多いことも分かりました」と述べた。そして最後に、日本人家庭に対しては「子どもと一緒に英語の練習をしてほしい、毎日少しずつ本を読むなど、教室以外で英語に触れる機会を増やしてほしい」とメッセージを送った。
次に、発表したのはVirginia Changさん(Holly Avenue Elementary School, Arcadia)。まず、JBAに謝辞を述べ、「今回の訪問は最高の冒険であり、1人の人間として、教育者として、人生を変える体験でした」と語った。特に印象深かったのはホームステイだと話す。「4歳の子が、1人でお好み焼きを作ってくれました。キッチンを汚すこともなく自分で卵を割り、きれいに作り上げました。既にそういった習慣が身に付いていることに驚きました」と感銘を受けた様子だった。また、アメリカでは外国語の授業が高校から始まるのに対し、日本では小学校段階から行われていることに驚いたという。「子どもたちは英語を教えてほしいと積極的に話しかけてきて、その意欲も素晴らしいと感じました」と学校での印象を述べた。
3人目に登場したのはHelen Fordさん(Alderwood Elementary School, Irvine)。日本の学校で見聞きしたルールを、自分の学校でも応用したいと語った。「私の勤める小学校では、『Own your actions』『Work to succeed』『Lead with kindness』『Show respect』という目標を掲げています。日本の学校でも同じように目標を掲げていて、私たちの学校にも取り入れたいものがありました」と話した。また、日本で『うちの子はシャイだから』という言葉を聞きましたが、私はその言葉を言わないよう意識しています。『Just try』をモットーに、ポジティブな言葉を子どもにかけていくことを、保護者に伝えています」と話した。最後に、「私たちは常に保護者とつながり、保護者にとって一番の情報源でいなければなりません」と、教育者として心掛けるべき点を語った。
4人目に登壇したMichelle Hulleyさん(Cypress Village Elementary School, Irvine)は、東大寺を訪れたことに触れ、「世界でもっとも古い木造建築物が、今でも人々に公開され、信仰の対象になっていること、こういった歴史が今日の生活にも溶け込んでいることは素晴らしく、アメリカも見ならうべき点だと感じました」と述べた。また「ホームステイ先の家族は、私と自分の子どものように接してくれました。時に英語でのコミュニケーションは難しいときもありましたが、そんなときは『Google Translate』が新しいベストフレンドになってくれました」とユーモアを絡めて話した。学校については、小学校段階からクラブ活動が行われていることに驚いたとのことだ。
5人目のBarbara Marksさん(Anza Elementary School, Torrance)は、校長の立場から、「私たち管理職は、常にオープンドアーでいなければなりません。コミュニケーションこそ保護者にとっての全てであり、私たちは彼らにとってアクセスしやすい存在であることが何より重要です」と語った。Barbaraさんの勤めるトーランスの学校では、日本語を話すチューターもいることに触れ、「英語を上手に話せないことを恐れず、質問をしてほしい。日本語で書いたものをこちらで訳すこともできるので、要望があればとにかく私のところに来てほしい」と熱い思いを語った。最後に日本での体験について、「皆調和が取れていて礼儀正しかった。学校に聖徳太子の『17条の憲法』を掲示したいと思います」と話した。
次に登壇したGreg Millerさん(John Muir Middle School, Burbank)。学校での印象について、「日本の学校、生徒は創造性に欠けているという批判を聞いていましたが、それは全く違っていたと感じました。子どもたちは創造的で、協力的、そしてフレンドリーでした」と話した。ホームステイは特に思い出深いものだったとのことで、「3人の子どもたちはとてもかわいかった。そして両親は2人とも教師だったので、親として、教師としてたくさんの話をしました。食卓で2時間ぐらい話していましたね」と語った。また、広島で原爆の資料を見たことは大きな衝撃だった様子で、「今までは『原爆の使用は必要なことだった』と教わってきましたが、その認識は完全に変わりました」と語った。
7番目に発表したのはPaige Morrisさん(Rancho San Joaquin Middle School, Irvine)。街が整然とした様子だったことが印象に残っているということで、「街中にゴミ箱がなく家に持ち帰ること、そして細かく分別することに驚きました」と話した。「学校では、生徒たちが自分たちでグループワークに取り組んでいること、そして先生がそれをとりまとめている様子に感動しました。日本の子たちはシャイで、あまり教室で話さないと聞いていましたが、そんなことはない、ということもはっきり分かりました。アメリカとは全く違う、昼食の風景も興味深かったです」と、学校での体験を述べた。
最後に登場したのは、今回のグループのリーダーを務めたGina Stutzelさん(Soleado Elementary School, Palos Verdes)。主に校長としての目線から発表した。「日本人は学校に助けを求めるのが苦手だ、と感じていました。実際に日本に行ってみて、その理由がよく分かりました。日本では物事がとてもスムーズにシステマティックに回っていて、校長先生のところに出向くことはしにくいのでしょう。今までも分かっていたつもりでしたが、今ははっきりと理解しました」と、日本の学校について学んだことを語った。就任2年目の日本の学校の校長と話をしたことも印象に残っているとのこと。「私たちは2時間にわたって、保護者のことについて話しました。彼は、私と全く同じことを考え悩んでいるのだと分かり、とても興味深く楽しい時間でした」と話した。
8人のメンバーの発表後には、大川JBA会長が挨拶。「今日は各人の体験を共有いただきありがとうございました。どれも興味深く、得るものの多い発表でした。皆さんにはぜひ日本の良さを、南カリフォルニアをはじめ、カリフォルニア全体、さらにはアメリカ全体に伝えていく広告塔になってもらえたら、とてもうれしく思います」と話した。
その後、複数のテーブルに分かれ、ランチを食べながらの交流会となった。参加者は、発表では語りきれなかった日本での体験を話したり、JBAメンバーの質問に答えたりと、実り多い時間を過ごした。