2022/8/1
JBAが毎年、北加日本商工会議所(JCCNC)と共同で行っている州都サクラメント訪問を、本年も去る6月15日、16日に実施した。ここでは、その模様をレポートしていく。
〈今回の訪問日程〉
■ 6月15日(水)
●Al Muratsuchi 下院議員との会談
●カリフォルニア商工会議所との昼食会
●カリフォルニア災害対策知事室(Cal OES)とのミーティング
■6月16日(木)
●カリフォルニア陸運局(DMV)とのミーティング(オンライン)
●カリフォルニア州経済促進知事室(GO-Biz)とのミーティング
※予定されていたRobert Hertzberg上院議員との会談は、同議員の急用によりキャンセル
JBAは毎年、北加日本商工会議所(JCCNC)と共同でカリフォルニア州都・サクラメントを訪問しており、今年は6月15日、16日の2日間にわたって実施した。同訪問は、州政府や関係団体との関係維持・強化を図る目的で20年間以上にわたって毎年実施しており、今回は10名(JCCNCより鶴見会長以下6名、JBAからは小林会長、中谷商工部会長以下4名)が参加した。
サウスベイ地域を地元とする唯一の日系アメリカ人議員Al Muratsuchi氏との面談では、地域経済に対する日系企業の貢献度をアピールし、さらに日本企業の投資を増やすにはどうすべきかの意見交換を行った。その他、DMV、GO-Biz、Cal OES といった州政府の複数の機関と会談し、その活動に関して伺うとともに、日系企業およびその社員が抱える課題に関して議論した。(本稿文責:商工部会・山田亮〈Kintetsu Enterprises Co. of America〉)
今回の訪問において最初にミーティングを行ったMuratsuchi下院議員は、その前の週に下院議員の予備選挙で勝利したばかりであった。喫緊の課題として、ホームレス問題や犯罪を挙げたほか、住宅の供給不足を解消すべく取り組んでいるとのことである。
Muratsuchi議員は、日本がカリフォルニア州内において最大の投資家かつ雇用創出者であること、また、自身の選挙区であるサウスベイ地区にも多くの日系企業が展開していることを認識しており、「世界の国家と比較しても第5位にあたる経済規模を持つカリフォルニア州は、そういった日本のビジネスを引き付け、サポートできる」と語った。また、特に再生エネルギー技術や水素テクノロジーは重要なテーマであり、日本のリーダーシップとテクノロジーに期待しているとコメントした。
また、かねてから相談してきた「日本からの新規駐在員にとって、カリフォルニア州の運転免許証の発行に時間がかかり過ぎている。日本の運転免許証により同州の免許証が自動発行できないか」という要望については、法律案をサポートしていることを教えていただいた(※この法律案については、残念ながら現在の会期中には承認されない見通しであるが、今後の展開を注視していく)。
今回の訪問では、サクラメントの郊外にあるカリフォルニア災害対策知事室(Cal OES)も訪問し、Abigail Browning チーフ(民間セクター担当)ほか、計4名と会談を行った。自然災害のみならず、新型コロナウイルスやテロ対策なども担当するCal OESは、諸官庁・学会・民間の各セクターの垣根を越えた連携を促進する仲介機能を担い、一般企業のようなトップダウンではなく原則的にボトムアップのマネジメントで災害現場の声を活用している機関である。
テクノロジーの活用については「山火事の観測において煙の中でも飛べるドローンを利用していること」、各種セクターの連携については「火災時における一般企業の要望を官公庁に取り次ぎ解決したこと」などの具体的事例を用いて説明を受け、日系企業にも有事(あるいはその前段階)にはぜひ、連絡・活用してほしいとのことであった。特に地震対策については日本の取り組みを参考にしているという説明もあり、当方からは日系企業の知識や技術を活用してもらうよう働きかけを行った。
GO-Biz(Governor’s Office of Business and Economics Development:経済促進知事室)は、カリフォルニア州の経済促進と雇用創出のための州知事特命機関であり、今回はHenan Liアジア担当代表とMaria Onorato外国投資プログラムマネジャーが参加した。GO-Bizは「SelectUSA Investment Summit」などのイベントや外国での活動を通して同州の魅力を訴える一方、州内の中小企業を中心に輸出の促進などを行っている。また、同州は予算を教育などの“将来”に重点的に割り当てており、気候変動や脱炭素にも多額の予算を投入していることを説明した。
日本とのビジネス協業で特に力を入れたい分野としては、本年3月に同州と日本国政府の間で結ばれた協力覚書に記載された気候変動や再生可能エネルギーなどに加え、エコ農業技術が挙げられた。GO-Bizとしても、来年3月に東京で開催予定の「World Smart Energy Week」などの活動を通して、日本でも活発に活動したい意向があると伺った。
カリフォルニア陸運局(DMV)とはオンラインで会談し、日本国の運転免許証による同州の免許自動発行の可能性について議論。DMVからは「REAL ID」の運用開始が近くなっており(2023年5月)、直前ではなく早めの取得を勧められた。
また、カリフォルニア商工会議所幹部との昼食会では、ざっくばらんにカリフォルニア経済・産業動向について意見交換を実施した。
今回のサクラメント訪問の成果を踏まえ、JBA会員企業がさらに有意義な情報収集やメリットの享受ができるよう、引き続き取り組んでいく。
日系アメリカ人州会議員として日本と強いつながりを持つMuratsuchi議員。サクラメントから、自宅があり選挙区でもあるサウスベイ地区に戻ってくるとまず向かうのは、某日系スーパーとのこと。物流逼迫に関する話題になった時も、我々に対し「どの魚(寿司ネタ)が届かないんですか?」と逆質問する一幕もあった。
各種官庁の集積するサクラメントにおいて、Cal OESの事務所だけは中心部より10マイルほど離れた郊外にある。これはサクラメントで有事の際に州知事以下幹部がここに移って執務することができるようにするためだそうで、実際、9/11の際やコロナ禍初期に、州知事がこの建物内で執務したことがあるとのこと。危機管理を統括する部門が自らリスク管理を実践している事実は、非常に興味深いと感じた。