2021/9/30
去る9月8日、JBA企画マーケティング部会主催によるビジネスセミナー「コロナ後のスタートアップへの投資動向と注目の技術・サービス」を、オンラインで開催した。
[講 師]
三谷大介さん
KDDI America, Senior Director of Investment Team
M&Aおよびベンチャー投資関連で日本において10年以上の経験。CVCの組成、 ジュピターショップチャンネル、エナリスなどの買収と米国スタートアップLimeへの投資を担当。現在はサンフランシスコを拠点に、北米、欧州、イスラエルの投資案件を管轄。
2021年に入り、米国のベンチャー投資額は記録的な金額に達した。あらゆる業種や規模の企業が自社の事業をアップデートすることを目的に、スタートアップ企業(以下スタートアップ)の技術やプロダクトを活用している。今回のビジネスセミナーでは、KDDIの三谷大介さんがベンチャー投資の最新の動向について紹介した。
最初に三谷さんは「2021年上半期のベンチャー投資額は、半期で昨年に並ぶ水準です。スタートアップに対して政府の規制がかかっている中国の状況とは対照的に、欧米を中心にIPOも好調です。Google、Apple、Facebookは政府の牽制下にあり、M&Aを控えているような雰囲気ではありますが、他方、Amazon、MicrosoftとSalesforceはコンスタントに大型買収を決めています。特にAmazonはWhole Foods Marketをはじめ実業系を中心に買収しています」と解説した。
続いて、スタートアップの実態について「成功したスタートアップ創業者の創業時点の平均年齢は45歳です。つまり、彼らの多くが『大人』なのです。少し前にUberやWeWorkの創業者のスキャンダルが報じられました。しかし、今ではそのようなやんちゃは認められず、スタートアップの経営者は、仕事仲間としても付き合いやすい相手になりつつあります」と説明した。
次にコア業務拡大を助ける目的、コア以外の業務をアウトソースする場合の2つの視点から、興味深いプロダクトを提供しているスタートアップの事例が紹介された。
「前者で注目されているのは、モバイルアプリを簡単に作成できるツールのbubble、ウェブサイトのデザインが簡単にできるサービスを提供しているFigmaです。さらにデータ活用が進む営業の分野においては、営業電話のトーク内容や話し方をAIで解析するツールのRevCommや営業チームの教育を支援するツールを手がけるMindTickle!が成長しています」。
コア業務以外を支援するサービスとしては会計・経理ソフトが代表的で、中でもRampをはじめとする「支出管理」のソフトがクローズアップされている。
さらにはカスタマーサービスのクラウド化にも触れた後、「今後、スタートアップとは互いに信頼できるパートナーとして自社に足りない部分を補うという関係性を築いていく必要があります」と、三谷さんはスタートアップの有用性を強調し、今回のセミナーを締めくくった。