2021/2/4
去る12月10日、NRI / 野村総合研究所アメリカの石崎宏幸さんを講師に迎え、バイデン政権誕生後に考えられる影響に関するビジネスセミナーをオンラインで開催した。
[講 師] 石崎宏幸さん
NRI / 野村総合研究所アメリカ所属の戦略コンサルタントパートナー。米国を拠点に25年以上、北米、欧州、日本、オセアニア地域の製造業のクライアントを中心に,成長戦略、クロスボーダーM&A、デジタル改革、企業再編など幅広い分野のコンサルティングサービスを提供。
最初に石崎さんは、バイデン大統領誕生による業界への影響について、「興味深いことに、製造業の株価は全般的に上向いています。金融業界も3月2日のパンデミック前にようやく戻ってきました。テクノロジー業界では、いろいろなセクターが台頭しています。『Zoom』も然りです。反対に、オイルとガスの業界は、バイデン政権の影響も大きく受けて、今もパンデミック前の状況に戻っていません」と説明した。
また、バイデン政権の影響が色濃く出る業界として、エネルギー、インフラ、自動車を挙げた。「エネルギーに関しては、パリ協定に再度加盟するでしょう。インフラはトランプ政権では特にポリシーがありませんでした。バイデン政権では雇用面も含めて大きな動きが出ます。自動車業界は180度転換するでしょう。カリフォルニアは特に自動車に対して規制が厳しく、ゼロエミッションビークル規制も掲げています。2035年にはハイブリッドを含めたオール電化に転換していきます。こうして電気自動車に重点が置かれ、自動運転も推進する方向です。コロナの期間、多少停滞したカーシェアリングも再び前に進むでしょう」。
さらに、パンデミックで苦境に立たされている航空業界とホテル業界について「救済措置が検討されるでしょう。具体的な形はまだ出ていません。ワクチンがどこまで普及するかで状況は大きく変わります。マスク着用も、バイデン就任後100日間は国民に義務化すると明言しています。できる限りの規制を実施するでしょう」と展望した。
続いて、新型コロナウイルスがもたらす世界経済への影響について、「世界の経済状態が2019年並みに戻るのはいつでしょうか。IMFによるとGDP回復はアメリカが2022年、欧州が22年か23年、日本は24年以降と予測されています。2008年のリセッションの時は回復に数年を要しましたが、今回の打撃は一過性のもので、特に個人消費支出の回復が今回は早く、リーマンショック時とは異なります。しかしながら、唯一苦境にあるのがサービス業です。また、渡航制限が続く中でインバウンドの早期回復の望みは薄いと考えられます」と話した。
このような中、バイデン政権と民主党は、消費者の収入とビジネスの安定化を支援するために、納税者への追加小切手の支払いや失業保険の期間延長を検討中であることを紹介してセミナーを締めくくった。