2020/7/16
新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、日系企業も急な在宅勤務の導入や従業員の一時解雇、一時帰休など異例の措置に迫られている。そこで、去る6月17日、人事労務管理に関するセミナーをオンラインで開催した。
[講 師]
三ツ木良太さん
HRM Partners、President/COO。日本電信電話株式会社(NTT)、ニューヨークに本社のあるコンサルティング会社を経て、2009年よりHRM Partners社に在籍。目標管理、業績評価、報酬戦略を含む人事制度の改善提案を多数手掛けている。
講師の三ツ木さんはセミナーの導入として次のように話した。「業界経験が40年になる弊社の会長と議論している中で、ビジネス面で多くの方が苦労されている点は大きく3つに集約されるのではないかという話になりました。それは、未知のウイルスへの対応ということで、先行きが不透明なために今後の計画や予測が立てづらい点、正しい情報の把握が不可能か困難である点、そして外出制限や再開にあたって業種・職種で対処が異なるという3点です」。
セミナー参加者に対しては、人員整理などを含む雇用対応を実施したかどうかに関するアンケートを取った(複数回答可)。結果は、「解雇実施:15%」「レイオフ(一時解雇)実施:7%」「ファーロウ(一時帰休 /一時無給休職)実施:32%」「雇用対応は実施せず:63%」となり、多くの企業が何とか雇用継続に努めていることが数字からも明らかになった。一方、アメリカ全体の状況を把握するために、大手で何らかの雇用対応を実施、または経営破綻した企業について業種ごとの傾向分析を含めて紹介した後、労働省労働統計局が発表している失業率に触れ、「失業率は4月に14.7%で5月に13.3%と回復していますが、失業保険受給者数を見ると大きくは減っていないのが分かると思います。雇用・労働市場の回復については今後も注視していかなければなりません」と付け加えた。
次に参加者に対して在宅勤務の導入に関するアンケートを実施。96%の企業が在宅勤務を何らかの形で導入したという結果を踏まえ、「在宅勤務を継続するかしないかを含め、SHRM(米国人材マネジメント協会)からのデータなどの情報を検討し、判断に役立ててほしい」と推奨した。
後半では、再開に向けての注意点が解説された。「従業員の安全と健康に気を付けることは最も重要ですが、人事労務管理面では他にも気にしておいていただきたいことがあります。たとえば、組織体制・人員計画の見直し、在宅勤務を含む多様な働き方、職責・職務範囲(ジョブ・ディスクリプション)の見直し、勤怠管理、業績管理・評価制度の見直しなどです」。
さらに、雇用上の決定にあたっての差別禁止や報復行為禁止について参加者に強く注意を促した。