2019/6/19
JBAは、北加日本商工会議所 (JCCNC) と共同で、毎年州都サクラメントを訪問をしている。今年も6月19日と20日に実施し、「カリフォルニア州における日本企業の貢献度」を、州議会議員を含む州政府の複数の機関にアピールした。重要機関との関係強化を推進する一方、JBA会員企業が州内での事業活動で直面する課題に対する解決手段の確保に重点を置いた会談を行い、実りの多い訪問となった。
今回の訪問日程
■ 6月19日(水)
・ Al Muratsuchiカリフォルニア州下院議員との会談
・ カリフォルニア州陸運局(DMV)との会談
・ カリフォルニア州経済促進知事室(Go-Biz)との打ち合わせ
■ 6月20日(木)
・ カリフォルニア州上院議会(議会開会中)の見学
・ カリフォルニア州災害対策知事室(Cal OES)との会談
・ Scott Weinerカリフォルニア州上院議員と会談
・ カリフォルニア州上院議員Robert Hertzberg氏への表敬訪問·カリフォルニア州商工会議所(CalChamber) 会頭と副会頭との昼食懇談会
・ Miyamoto International, Inc.訪問
JBA の今期サクラメント訪問団は前日から現地入りをし、第66下院選挙区選出、カリフォルニア州唯一の日系人カリフォルニア州議会議員のAl Muratsuchi 議員と懇談の時間を持った。本年度もLAEDC(ロサンゼルス郡経済開発公社)の傘下機構であるWTCLA(The World Trade Center Los Angeles)作成の南カリフォルニアにおける海外直接投資報告書(『Foreign Direct Investment in Southern California 2019』)を持参し、日系企業のカリフォルニア州への投資規模、雇用人数および平均賃金は当地に進出している他のどの国よりも引き続き上回っていることを説明した。
また、Muratsuchi議員はカリフォルニア州の在日オフィスが日系企業誘致のために以前東京にあったが、ブラウン知事時代に閉鎖された旨の説明をした上で、同オフィスの再オープンに向けて意欲を示した。
カリフォルニア州陸運局との会談では新しい知事体制下での幹部4人と会談した。カリフォルニア州のインフラ整備、2020年10月から空港や連邦施設などの保安検査で必要となるリアルIDの発行状況から、自動運転自動車の試験状況、ゼロエミッション車の普及計画進行状況、運転免許証発行で日系企業駐在員が直面している問題まで、幅広いトピックを話し合った。また、重要課題であった日系企業会員から事務局に寄せられる運転免許証の発行の問い合わせに関しては、新体制下でも引き続き個別に対応をしてもらえることを確認した。
今年、カリフォルニア州新知事に就任したGavin Newsom氏の経済促進に関する基本ポリシーおよび活動内容は、A)国際貿易の拡大、B)気候変動・地球温暖化現象に注視、 C)輸出及び直接投資の拡大策、 D)ZEV(ゼロエミッション車)普及に対する支援、特にインフラ整備に注力、 E) AI(Artificial Intelligence)による労働環境の変化についての利点・懸念等を協議、の5項目に要約されると説明を受けた。
Go-Bizは企業誘致·雇用創出を大きな職務の一つと考えており、税優遇措置 (California Competes Tax Credit)という所得税優遇制度を、カリフォルニア州への進出を果たした企業、あるいは長年同州で事業運営する企業に提供している。その他、同州内へのオフィス移設や拡張を希望する企業に対する誘致先情報や労働力確保への支援サービスも行っている。カリフォルニア州で事業運営を行うにあたり、全米屈指の高い運営費が問題となっており、特に住宅事情の悪化(不動産価格および家賃の高騰・深刻な住宅不足)は同州で経済活動を行う上で最も深刻な問題と認識。今年1月、州知事は170億ドルの住宅関連特別予算を承認したが、これは一過性のものであり、住宅建設のためのインフラ整備だけでなく問題解決のためには経済界の多大な協力が必要であると訴えた。
ゼロエミッション車(ZEV)に関して2018年7月現在、現在約50万台のZEV自動車販売、7000カ所の充電スタンド(20600チャージポイント)の規模となっており、48車種が販売されている。今回の発言でJBAが注目したのは電気自動車だけでなく水素自動車への支援も行われている点。州政府としては現時点で両テクノロジーへの支援を公約しており、水素自動車関連の開発に関わる企業には朗報であると考えられる。
Cal OES 所長であるAbby Browning氏は、Chief of office private sector(民間セクター担当責任者)として、災害時におけるビジネス、非営利団体、大学、コミュニティーへの連絡を担っている。災害避難の際、避難方法などの連絡先はカウンティー(郡)の保安官(Sheriff)の管轄になる。Cal OESには災害時の情報が吸い上げられるため、ローカルビジネスが災害時から復旧に至るまでの情報ソースまたは相談場所として利用できると紹介された。また、Cal OES は州内の企業に緊急事態管理、公共安全、災害復興などの各種トレーニングをCA Specialized Training Instituteを通じて提供することができると説明を受け、各企業はそれらの事態に備えての準備を常に準備するべきであると語った。
議会が開催中ではあったが、Robert Hertzbergカリフォルニア州上院議会多数党総務と Scott Wienerカリフォルニア州上院議員との面会が実現。JBAが日系企業の経済や雇用創出の貢献度を持参した海外直接投資報告書を用いて具体的にアピールすると、両議員は日系企業に謝意を示した。Wiener議員は日系企業の貢献の認知度が低いことを認めた上で、日系企業が功績に見合う待遇を受けられていないと話した。
また、カリフォルニア州では人口増加に伴って住宅を増やすことが重要ということに加え、輸送、水不足問題、水のリサイクルや節水など多くの問題が起こっている。これらの問題に関しては、新知事と緊密に連携し、前向きに取り組んでいくとの談話があった。さらに、日本訪問の際、日本の住宅事情について多くを学んだという発言も聞かれた。
California Chamber of Commerce(CalChamber)の主催でランチミーティングが設定され、ニューサム新知事の国際政策、カリフォルニア州の労働人材難、環境規制、日系企業の州外移転や日系企業の貢献の認知度などに関する議論が展開された。CEOのAllen Zaremberg氏は、「カリフォルニア州は国家に例えると世界第5位の経済規模を誇るまでに繁栄した一方で、家賃や住宅コストを含む生活費の高騰によって人件費が高騰すると同時に記録的に低い失業率水準を保っており、州内で良い人材を理想的な給与で確保することが難しくなっている」と語った。しかしながら、同州は研究開発の中心地であり、多くの世界最高レベルの教育機関が存在するため、これらの機関で高度な教育を受けた魅力的な人材が豊富で、多くの企業にとっていまだに魅力的な場所となっているとの話をいただいた。
日系企業のカリフォルニア州における経済や雇用への貢献の認知度に関しては、多くの政治家が頻繁に交代することから、継続して日本企業の貢献を訴えていくことが重要であることや、日系企業がどの地域に投資、雇用を創出しているかを示すビジュアルマップなどを作成して多くの人に知ってもらうのが効果的ではないかとのアドバイスもいただいた。
最後にCal Chamberの優先事項は、1)住宅を増やし住宅難を緩和、2)データ保護法(CCPA)の改正、3)ロビー活動による州内の事業者支援(雇用法、環境規制法、エネルギー政策他)であるとの説明を受けた。
Miyamoto International, Incは州政府機関ではないが、建築設計事務所として地震研究·耐震設計技術に定評があり、Cal OESと積極的に交流しながら情報提供を行っている。今回の訪問では、Dr. Nifukuよりカリフォルニア州の各断層の説明や、地震による被害からの復旧についてお話をいただいた。基本的な危機管理は、1)緩和(Mitigation)2)準備(Preparedness)、3)反応(Response)、4)復旧(Recovery)の各局面で考えることが重要であると説明があった。しかし、大災害においては被害をゼロにすることは困難なため、ゼロにする努力をするよりも復旧の時間を短縮すること、つまり回復力の保持が最も有効であると説明を受けた。
JBAは今回面会した議員や政府機関との関係強化と対話を継続して行い、JBA企業が有意義な情報やメリットを享受できるよう引き続き取り組んでいきたい。