去る6月6日に開催された「Select LA Investment Summit 2019」で、南カリフォルニアにおける海外直接投資報告書の2019年度版が発表された。JBAはこのレポート作成にあたり、今年度もスポンサーとして協賛した。日本は直接投資において、今年も雇用者数、企業数、総賃金いずれも1位となった。
JBAの協力団体、LAEDC(Los Angeles County Economic Development Corporation=ロサンゼルス郡経済開発公社)の傘下機構、WTCLA(The World Trade Center Los Angeles)は、6月5日と6日の2日間にわたってダウンタウンLAで「Select LA Investment Summit 2019」を開催した。同イベントは、南カリフォルニアにおける貿易の動向、ロサンゼルス郡での直接投資の機会や市場傾向などについて紹介するもので、毎回、国内外から多数のビジネスリーダーが参加する。JBAからも商工部会から酒井紀幸副部会長、部会員の諸岡みどりさん、福島祥修専務理事らが出席した。
イベントの2日目には、南カリフォルニアにおける海外直接投資報告書の2019年度版「Foreign Direct Investment in Southern California 2019」(以下「FDI Report」)が発表された。これは2018年度の南カリフォルニアに対する諸外国からの投資や貿易などの活動に関わるデータをまとめたもの。JBAは日系企業の南カリフォルニア地域への貢献度を示すデータの重要性を認識し、例年、同レポート作成にスポンサーとして協賛している。
また、「Select LA」では南カリフォルニア地域での直接投資に特に貢献した企業を選出し、「Foreign Direct Investment Award」を贈呈している。今年の受賞企業はHonda North America。同社を代表してスピーチを行ったスポークスマンのマルコス・フロマー氏は「北米のホンダの歴史はロサンゼルスの小さな事業所から始まりました。そこでのオートバイの販売から、やがては乗用車、さらに今ではジェット機まで手掛けるようになりました。小さなビジネスが努力の継続によって大きなアメリカンドリームに成長できたことに、当社の北米でのスタート地点となったロサンゼルス地域に感謝の意を表します」と語った。
「FDI Report」の紹介は『Los Angeles Business Journal』の発行人、アンナ・マグザニアン氏が行った。本レポートでは、南カリフォルニアの6郡(ロサンゼルス、オレンジ、リバーサイド、サンバナディーノ、サンディエゴ、ベンチュラ)における海外企業の活動について、雇用者数、企業数、賃金の観点から集計している。そして日本は、雇用者数8万1751人、企業数2407企業、総賃金61億8600万ドルで4年連続の3部門全てにおいて1位となった。ただし、前々年比で雇用者数は6.3%減少、企業数も2.4%減少。雇用者数を基にした10位までの国は右ページ表の通り。前年との違いは3位と4位の国が入れ替わった点で、前年4位のカナダがフランスを追い越して3位に付けた。さらに、前年はトップ10圏外だった台湾が10位に入り、前年10位のオランダが13位にランクダウンした。
このように、雇用者数、企業数は若干減少したものの、日本企業は今年も雇用、企業、賃金の全てにおいて2位のイギリスを大きく引き離す結果となった。
ブレイクタイムには、酒井商工部会副部会長が、WTCLAのプレジデント、スティーブン・チャン氏に対面取材を行った。その中での「日本企業は南カリフォルニアにおいて最大の貢献をしているにもかかわらず、地元の人々や政治家はその事実を把握していません。どうやって、この事実を認識してもらえばいいでしょうか?」との最初に質問に対して、チャン氏は次のように答えた。「発信力を高めることが重要です。しかも自分たちではなく第三者にそれを語ってもらうことでインパクトが強くなります。私たちはすでに『FDI Report』にまとめることで、日系企業の貢献の重要性を把握しています。この数字を活用すべきです。同時に日系コミュニティーの中でもこの事実を認識してもらい、外部に向けて発信していただきたいと思います。そのような積み重ねによって、政治家も日系企業によるロサンゼルスと南カリフォルニアへの影響の大きさを認識するようになると考えます」。
「ロサンゼルスでの新拠点開設や移転に興味を持っている日系企業に対して、同地が提供できる魅力とは?」という問いに対して、チャン氏は「2つあると考えます。1つは機会の多様性です。ロサンゼルスではすでに実に多くの産業が開花しているだけでなく、同時進行で交通関係、ゲーム、スポーツ・エンターテインメントなど新しい機会も成長しつつあります。2つ目は人の多様性です。アメリカの歴史の上では、今はいいこともあれば悪いことも起こっています。世界中の人がアメリカが外国生まれの人々に対してオープンではなくなっていると感じているでしょう。しかし、ロサンゼルスは国際的な土地です。ガルセッティ市長も言ったように『私たちの文化はあなたたちの文化』です。外国の方々がロサンゼルスでビジネスを行う際には、家族や同僚を母国から連れてこられると思いますが、私たちは皆さんを、この土地のビジネス社会の一員として歓迎します。ここで疎外感を感じたりする必要はありません」と答えた。
最後にチャン氏は日系企業に「今、ロサンゼルスは経済復興の時期を迎えています。しかし、需要に対して現地でまかなえる供給量が十分でないという事実があります。だからこそ、外国からの投資が我々には不可欠なのです。ロサンゼルスで一緒に目標達成に向け、取り組みましょう。1220億ドルに相当する交通機関のプロジェクトも進行中です。また、ロサンゼルス・ラムズのスタジアム建設には最新の技術が必要です。日系企業にはぜひ、これらのプロジェクトに積極的に関与していただきたいと思います。また、この時期は永遠ではありません。好機を逃すことなく、日系企業にロサンゼルスでの市場参入の機会をつかんでいただきたいです」とメッセージを送った。
また、チャン氏への質問にもあったように、南カリフォルニアにおける日系企業の経済的貢献の大きさを社会に向け、どのように発信していくべきかについて、「WTC、LAEDCをはじめとするローカルのパートナーと共に、日系企業の地域貢献と企業数、雇用数、地域の問題解決の事例を含むビジネスプレゼンスを具体的に客観的な形で伝えていくことが重要だと感じています。経済貢献のみならず、地域社会の一員として現地での事業の業績を還元する活動に力を入れていくことも重要になってくると確信しています」と語った。そして、今後ますます、WTC、LAEDCをはじめとする現地の経済、政治、教育文化団体との友好な関係性を深めていきたいと締めくくった。
南カリフォルニアにおける海外直接投資(順位は直接雇用数順)
国 | 直接雇用数 | 企業数 |
海外企業による全雇用数 のうち同国が占める割合 |
賃金総額 (推定) |
|
1位 | 日本 | 81,751 | 2,407 | 19.2% | $6,186M |
2位 | イギリス | 64,993 | 1,281 | 15.3% | $4,348M |
3位 | フランス | 44.611 | 967 | 10.5% | $3,221M |
4位 | カナダ | 42,714 | 895 | 10.0% | $3,298M |
5位 | ドイツ | 27,449 | 837 | 6.4% | $1,873M |
6位 | スイス | 23,216 | 370 | 5.5% | $2,104M |
7位 | アイルランド | 16,594 | 161 | 3.9% | $1,272M |
8位 | 中国 | 15,683 | 448 | 3.7% | $1,202M |
9位 | スウェーデン | 10,408 | 119 | 2.4% | $549M |
10位 | 台湾 | 10,145 | 262 | 2.4% | $756M |
南カリフォルニア全体 | 425,579 | 10,305 | 100% | $30,982M |
(データ:WTCLA 「Foreign Direct Investment in Southern California 2019 」)