1975年神奈川県出身。獨協大学卒業後、98年にぺんてる株式会社に入社。海外営業本部を経て、2002〜03年シカゴ駐在。04年にロサンゼルスに移り、マーケティング、経営管理を担当。10年にいったん帰国後、13年にCOOとして再渡米。15年より現職。
1998年、ぺんてる株式会社に入社し、海外営業本部のマーケティング部門を経て、2002年にPentel of America, Ltd.のシカゴ支店に赴任しました。イリノイ州は小学校の終わりから1年半を過ごした場所。当時は言葉に引け目もあって、自分から積極的に人と関わることができず、忘れ物をしたようでいつか戻ってこなきゃと思っていた場所でもありました。日本人がいない環境で新たな社内システムの導入に携わり、現地のスタッフとも表面的以上の関わりを持て充実した時間だったので、1年後のロサンゼルス異動の辞令を最初は断ったくらいでした。でも来てみたら天気は良いし、日本の物も手に入るし、生活ははるかに快適ですね。シカゴは楽しい街ですが、一年の3分の1は凍っていますからね(笑)。
当社は1965年の設立後、サインペンから始まって、シャープペンシルと替芯、油性ボールペンを中心にさまざまな文具の販売を展開してきました。そこに全社を挙げて「EnerGel」という商品でジェルペンという新たな軸を打ち立てようとしたのが、私がLAに異動する直前の2000年代初めでした。
異動後はまずマーケティングを担当。マーケティングと言っても、行ったのは地道なサンプリングが中心です。文具は単価が低いので、高額なテレビ宣伝などはなかなかできませんし、またコモディティーとブランドコンシャスな物の間の微妙なラインにある物です。ブランドにこだわる人はこだわりますが、とりあえず売り場にある物を印象で買うという人も多くいます。だからこそ、とにかく使ってもらって、製品の良さを知ってもらう地道な活動が大切になってくると思うのです。
しかし、サンプリングは結果が出るまでに時間がかかります。製品の良さを信じて地道な活動を継続しながら、近年ではソーシャルメディアなどの活用も積極的に行い確実にファンを作ってきて、2015年にようやくひとまずの目標に達しました。同じく15年は当社の設立50周年にあたり、また経営を引き継いで President & CEOになったという意味でも印象深い一年でした。
特別なことではありませんが、経営者として気を付けているのは、現場の社員とよく向き合ってよく話し合うことです。一度きりしかない人生のかなりの時間を仕事に費やすわけですから、社員が働いて楽しいと思える会社でありたいと思うのです。商品の販売においても、できるだけ売り場に出て、現場でお客さんの声を聞くように努めています。
ぺんてるはこれまで、ノック式シャープペンシルやペン型修正液など世の中になかった新しい物を生み出してきました。戦後の日本の教育を支えるため、くれよん製造から始まった歴史から、筆記、ペインティング、ドローイングまで幅広いラインナップの文具を生産し、さまざまな形でお客様の「表現するよろこび」をサポートできることが当社の強みであり、また同時に目指すことでもあります。デジタル化が進むと共に文具で書く行為は減っていくかもしれませんが、手を動かして書くのは、残る、記憶に留めるという面からも大事なことだと思っています。文具を通して、「表現するよろこび」を育むことを確実に遂行していくのが、米国での販売を担う現地の私たちの責任だと思っています。
Pentel of America, Ltd.◎ぺんてる株式会社の米国子会社として、1965年に設立された。画材、消し具、マーキングペン、ボールペン、シャープペンシル、替芯といった文具を米国で販売している。