JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

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2016/7/6

教育文化部会 「2016年度 USEJ プログラム報告会」

去る7月6日、トーランスのミヤコハイブリッドホテルにて、2016年度の「U.S. Educators to Japan(USEJ)プログラム」に参加した教育者らによる報告会が開催された。日本滞在から帰国したばかりの参加者らが興奮冷めやらぬ面持ちで、日本での学びを報告した。

USEJ


訪日プログラムを終え
第2フェーズへ

U.S. Educators to Japan(USEJ)プログラム」は、日系企業の駐在員子女を受け入れている米国現地校への感謝と、対日理解の促進を目的として、アメリカ人教育者を日本に派遣しており、今年で41回目の開催となる。2016年度の参加者はサウスベイ地区およびアーバイン地区から選出された7人。6月19日から30日まで日本を訪問し、東京、広島、教徒、奈良と各地で日本の教育システムや文化を学んだ。

7月6日に開催された報告会当日は7人の全員が出席し、JBA役員や教育文化部会員ら、また15年度のUSEJプログラム参加者2人を前に、日本での経験を報告した。教育文化部会副部会長の土川さんの司会で、まず前田利毅教育文化部会長が挨拶に立った。
「おかえりなさい。日本で楽しい時間を過ごされたでしょうか?皆さんにとっては、今日からUSEJプログラムのフェーズ2が始まります。ご存知のようにJBAはビジネス団体。ビジネスで投資をするときはリターンを期待しているわけですが、皆さんを日本に送り出したのは一種の投資。リターンを期待しています(笑)。しかしJBAに返していただく必要はありません。皆さんが教えている学校、ご自身のキャリア、そしてとりわけ皆さんの生徒たちに返してください。日本で学ばれたことを、学校、学校区、同僚の先生方に対して、そして教室で活用してください」と、参加者のこれからのさらなる活躍に期待を寄せた。

前田利毅教育文化部会長

挨拶をする前田教育文化部会長


参加者らがプレゼンテーション

N03_USEJ

訪日報告のプレゼンテーションは、参加者を代表して2016年度USEJプログラムリーダーのHarry Meussnerさん(Venado Middle School, Irvine)、サブリーダーのAghassi Gharadaghianさん(Rancho San Joaquin Middle School, Irvine)、そしてLea Toombsさん(Palos Verdes Peninsula High School, Palos Verdes)の3人が行った。日本で撮影した膨大な数から厳選した写真を盛り込んだスライドを映し、プログラムの時系列に沿って、3人が代わるがわるそこで見たもの、学んだものについて感想を述べた。

左からAghassiさんとLeaさん

左からAghassiさんとLeaさん

〈2016年度USEJプログラム日程〉
■到着日(6/19)東京着
■1日目(6/20)オリエンテーション&セミナー。着物の着付け体験(鈴乃屋)

N05_USEJ

■2日目(6/21)品川区立立会小学校見学(希望者によるデモ授業実施)。広尾学園中学校・高等学校見学
■3日目(6/22)新幹線で広島へ移動。広島平和記念公園(広島平和記念資料館、原爆ドーム訪問、被爆者による講演)
■4日目(6/23)広島市立基町小学校見学。宮島の厳島神社訪問。京都へ移動。
■5日目(6/24)同志社国際学院見学。午後は自由行動。
■6日目(6/25)午前は希望により京都ツアー。午後は奈良または斑鳩へ移動し、ホストファミリー宅へ
■7日目(6/26)ホストファミリーと自由行動
■8日目(6/27)斑鳩町立斑鳩中学校見学。東京へ移動
■9日目(6/28)各自でフィールドワーク
■10日目(6/29)午前は自由行動。午後はラップアップ会議、フェアウェルディナー
■帰国日(6/30)離日

プログラム2日目、立会小学校を訪問した際には、全校生徒が体育館に集合し、パフォーマンスを披露するなどして参加者らを歓迎。「まるでスーパースターになったみたいでした(笑)」。その後、希望者が日本の小学生を相手にデモ授業を実施した。ほとんどが英語を理解しない生徒たちだったが、先生や生徒たちが助けてくれ、楽しい授業になったと報告。Harryさんは、自分が日本語をひと言口にするだけで皆が非常に喜んでほめてくれたと言い、「アメリカに外国から来る生徒たちが、そんなふうに言葉を覚える時に、私たちはそんなふうに暖かく対応しているだろうか」と振り返った。Harryさんはこの経験を活かし、日本語や中国語など英語以外の言語で作った課題を配り、辞書を使って読み解くなどして、全く知らない言語の中で学ぶという経験を英語ネイティブの生徒たちにもさせるワークショップを実現したいと話した。

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実り多き広島、京都訪問

3日目はあいにくの雨だったが、歴史に思いを馳せて広島を訪れるのに良い日だったとAghassiさん。多くの参加者が生徒たちやその家族と作った千羽鶴を持参し、平和祈念公園に納めた。広島平和記念資料館を見学した他、被爆者から体験談を聞く機会も設けられ、心を揺さぶられる経験をしたという。「これまで知っていたアメリカ側からの原爆の歴史に加えて、日本というアメリカとは異なる側からの歴史に触れることができました。また、広島では、日本を中心においた地図にも触れました。アメリカを中心にした地図を見慣れた目からすると最初は奇異に感じますが、でもそれぞれにその国の地図があり、見方があるのです。アメリカに来る生徒たちは、それぞれ生まれ育った国から学んだ物事の見方を持っている、そのことに対して理解が深まる経験でした」とAghassiさん。

広島訪問

4日目に訪れた基町小学校は、中国残留孤児の家族が多く暮らしている地域にあり、訪問したクラスには中国から日本に来たばかりで日本語が苦手な生徒もいた。その生徒は英語に長けていて、英語でエッセイを朗読。感銘を受けた参加者が「素晴らしかった」と述べると、それまで日本語ができないために自信をなくしていた生徒の顔に満面の笑みが浮かんだという。「人との関わりが、どんなに人に力を与えることができるかと感激しました」とHarryさん。

5日目は、京都の私立のインターナショナルスクールである同志社交際学院を見学。異なる文化の中で暮らし、学ぶ中で直面しているチャレンジについて、海外から日本に来た生徒たちから直接、話を聞いた。また、京都では狂言や文楽などの日本の伝統芸能にも触れたが、それまで授業で生徒たちに教えてはいたものの、実際に見るのは初めてだったという。今後、この経験が授業にも活かされることになりそうだ。


ホームステイで日本の生活を体験

6日目は奈良に移動し、午前中は木造軸組建築としては世界最大規模の東大寺や、世界最古の木造建築である法隆寺を見学した。京都に続き、授業で教えている事柄に実際に触れたことは、何よりの学びとなったようだった。午後には、ホストファミリー宅へ移動することになっていた参加者たち。
「実はとても緊張していて、移動のバスの中では日本語の基本フレーズを何度も確認しました」とLeaさん。心配は杞憂に終わり、たった2日間のステイだったが、翻訳アプリを使うなどして言語の障害もクリアし、各家庭でかけがえのない友情が結ばれたようだった。「ホームステイを通して、教職という仕事のレベルを越えて、個人のレベルで日本を経験することができました」とAghassiさん。

N10_USEJ

給食8日目に見学した斑鳩中学校、また2日目に見学した立会小学校でも、参加者らは生徒と給食を共にした。生徒たちで均等に食事が配分されるように配膳し、誰も文句を言わず、残さず食べているのに衝撃を受けたと報告。アメリカの給食とは異なる、日本の給食の質の高さにも驚いた様子だった。8日目午後に東京へ戻ると、9日目は各自で自由行動。野球観戦、史跡巡りや築地市場、秋葉原、ディズニーランド観光などそれぞれが思い思いに日本を楽しんだ。


お台場


訪日経験を活かす今後の計画

プレゼンテーションの後は、参加者全員が前に出て、それぞれの感想を披露。盛りだくさんのプログラムで各地を見学した参加者たちは、昼間はUSEJのプログラム、夜は日本観光と、寝る間も惜しんで日本に触れたが、それでも10日は非常に短く感じられ、まだまだ滞在したかったという。参加者からは「人生を変えるような経験で、こんなに充実した10日間を過ごしたのは人生で初めて」との感想も上がった。

言葉の分からない世界にいると、日常の簡単なことでも急に難しく、怖いように思えてくる経験。でも困っていたら、いつも誰かが声をかけてくれて教えてくれた経験。そしてどこへ行っても温かく迎えてもらった経験。そうした経験を経た参加者らは「アメリカに来る子どもたちは、新しい教育環境に適応しなければならないだけではなくて、言葉の面でも、生活環境の面でも、全く新しいものに適応しなければなりません。そんなプレッシャーでいっぱいの生徒たちに対して、私たちが日本でしてもらったように、もっと温かいサポートをしていきたいと考えています」と口々に述べ、今後の具体的な取り組みの計画も共有。日本で学んだことを反映し早速教材の改訂に取り組んだり、また教室内に各国の言葉を貼り出したり、また日本をはじめさまざまな国の文学作品を生徒に紹介することを考えている先生もいるようだ。

この後、参加者が教育文化部会員らと個別のテーブルで昼食をとりながら懇談。各テーブルでそれぞれの日本体験が情熱的に語られていた。

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